「なんでだよォオオオ!!」
 "触診"という単語に反応して思わず叫ぶ。なんというか突っ込みどころ満載な会話だったような気がしないでもない。なんだ例によってって。なんでお前はすの乳サイズ把握してんだよとかぶちぶち考えながらぎゅっと携帯電話を握り締めた。スピーカーからはあれ、はすじゃねえやとかなんとかほんの少しだけ驚いたような言葉が流れ出る。
『配達先間違ったのかこれ。あれ、…なあ!はすの住所ってここでいいんだろ!』
「うるせぇよ!ここだよ!はすちゃんはここにいますぅー!!」
『え、じゃああってんだよな、あーもういいや!あってた!』
 銀時と電話をしながら誰かと会話をしているのか時折スピーカーから叫び声が飛び出して銀時の鼓膜を無遠慮にぶったたく。電話口くらい塞げよなとか思いながらきんきんと耳の中でしぶとく木霊する音を追い出そうと頭を振った。激しく不愉快だ。
「声でけえんだよコノヤロー。落ち着けないんですか、がきか。話し方といい二日前とは別人のようだなお前」
『え?お兄さん俺のこと誰だと思ってんの?』
「ナギだろ」
 一瞬。変な間が開いたような気がした。
『…まあいいか、面倒くさいし。そうですナギです』
「ちょっと待てェエエ!!何その意味深な発言!!?」
 自称ナギの投げやり気味に言われた言葉になんだかとてつもなく重要なことを見逃したような気にさせられる。銀時は携帯電話に向かってなんだなんだと騒ぎ立てたが、結局自称ナギからまあいいかの意味を教えてもらえることはなかった。なんだかんだ喚いてはみたもののかなり無理やり話をねじ曲げられて届いた小包の話にすり替えられる。銀時としてはうやむやのままねじ曲げられたことが非常に不愉快だったが、しかし隣の部屋でははすが眠っているのでそれ以上話を引き伸ばすことも出来なかった。きっと散々喚いたお陰で眠れてもいないだろうし何よりそろそろはすの昼飯にお粥なり雑炊なり作らなければならない時間なのだ。家に常備してあるものは食後に飲むタイプなので腹に何か入れなければ始まらない。
『服は適当に見繕ってまた送るよ。サイズは解ってるから心配しないでね』
「…あわなかったら、」
『触診する』
「オィイイイ!!」
 げらげらと楽しそうな笑い声が響く。やっぱり違う、のかも知れない。廓言葉もなければ話し方自体に人当たりのよさが滲み出ていてまったく違う印象を受ける。


 








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