一度深いため息をつくと、銀時はめんどくさそうに遠い遠いコンビニ目指して足を踏み出した。
 しばらく人通りの多い道を歩いて、確か近道だったはずの人通りの少ない裏道を歩く。道幅は広いが若干薄暗く、いつもは後方へ飛んでいく景色を歩きながらゆっくり見ているとなんだか違う場所に思えてくるのは多分錯覚だ。ここはこんなにも人がいなかっただろうか。
「おわっ!?」
「――っ」
 目の前に突然現れた人影に思わず声を上げる。相手は気付くのが遅れたのかどっかりと銀時の体に体当たりをくらわせ、そのままたたらを踏んですっころんだ。尻餅をついた形のままぶんぶんと頭を振る。銀時も若干受けた衝撃に胸を詰まらせて咳き込みつつ、一応そこは男として紳士的に手を差しのべた。
「悪ィ、お嬢さん大丈夫?」
 ぶつかった時に相手の体が柔らかかったので勝手に女だと決めつける。茶色い髪が俯く顔にかかって表情はよくわからなかったが、それでもなで肩の華奢な肩と細い手足、白い肌と柔らかそうな髪に女だという勝手な偏見を確信的なものへと変えた。銀時の手に気付いた彼女がゆっくりと顔を上げる。
「…ありがとう、ございます」
 そう言う彼女の顔はまだ成人していない少女のそれで、けれど十代後半なのか少女の顔に大人びた表情が上乗せされていた。
「いいよ、お嬢さん立てる?」
 ぽふ、と素直に銀時の手を取る彼女の手がやんわりと立つために力を込める。白い手は、女性というよりもふくふくした子供に近いそれだった。小さな手を引っ張って少女が立つのを文字通り手助けする。
「すみません、ありがとうございます――」
 立ち上がった少女が銀時の真っ白い着流しを見てあ、とか言いながら申し訳なさそうに頬を歪めた。銀時の顔と着流しを交互に見つめるのでつられて銀時も自分の姿を見下ろす。
「あ…」
 小さく呟いて首を傾げた。赤黒い、染みが。べっとり、真っ白な着流しに染みを作っていた。目の前の少女の顔が曇っていく。
「…すみません。服を、…汚してしまいました」
 「ああ、別にいいっていいって。気にしてないから――」
 言いながらふと銀時の顔が固まる。何でもないように浮かべていた笑顔が貼り付いた。
 ――誰の、
 急速に冷えた頭が疑問を覚えてもう一度確認をするために自分の姿を見下ろす。ちょうど腹の下。べっとりついた、真っ赤な、"血"。
「お前っ、大丈夫じゃねぇじゃねぇか!いや大丈夫なんて言ってないよねもとから!!」


 








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