依然薄っぺらい笑顔を張り付けたまま、若干の訛りを含んだ言葉で語りかける。
「もうよいだろう。所詮お前は朱の鬼姫。逃げたところで行く処などありんせん。わしら以外に、一体誰が。お前の事を認めてくれる?」
 けらけらと笑って鬼姫を見やり、さて行こうかと言いながら手を差しのべる。鬼姫は別段興味もないのか無関心にそれを眺めてもう一度ぼんやりと空へ視線を移した。茶色い瞳を空に固定したままよろよろと壁に助けられて立ち上がり、ふっと吐息すると足を一歩踏み出す。それから未だににやにやしている天人をちらりと一瞥した。
「お前らは、私を道具として認めているだけだ」
 そう言って両脚に力を込める。ぼだっ。と一際大量に血の塊が地面へ落下した。
「鬼姫てめぇ!!」
 下から何か叫んでいたが特に気にとめずそのまま民家の屋根を突っ走る。パタパタと血が道しるべを作っていたがどうする事も出来ないのでとりあえずは放っておくことにした。ずきりずきりと腹が痛む。
 もう、嫌なのだ。
 中途半端に残留した感情が悲鳴を上げる。
 もう嫌なのだ、あそこで誰かを殺す事を待つだけなんて。毎日を、赤一色で塗り潰すなんて。

 もう、嫌。なんだ。



『今日のあなたの運勢は最高!あなたを一番に考えてくれるメイドさん的な女の子に出会えちゃうかも!!』
 きゃはっ(ハートつき)とか言いながら本日の運勢を発表するお姉さんの声を聞きつつ、メイドさん的な女の子ってなんだ。と頭の片隅で突っ込む。昨日買っておいたロールケーキをまるまる一本かじりつきながらそういえば今日はジャンプの発売日だとか思いついた。バイトの新八に店番を任せてのろのろと外へ出ていく。…あの占いめっさ嘘くさい。
「いや欲しいよ、メイドさん的な女の子。俺を一番にとか最高じゃん」
 独り言を呟いて小さく吐息し、本当に出会えたらいいのになとかぼんやり考える。だって神楽は到底メイドさんなんて務まらない、というか、あんなに怪力なメイドさん嫌だ。
 ぶらぶらと気だるそうに歩きながらコンビニへ向かい、そこでふと自分はなぜ歩いているのかを今更疑問に思った。原チャリが、ない。
「あれ。原チャリ忘れちゃったよどうしちゃったの俺」
 くるくるしておさまりのない銀の髪をわしわしかき混ぜてその場に棒立ちになる。店からコンビニまでには結構な距離があり、いつもは原チャリに跨って通る道を何故だか今日は歩いてきてしまった。歩き通す気力なんてないが店の万事屋も結構後方にあったりするわけで。


 








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