にまにまと笑いながらゆっくりと立ち上がり、二人してわき腹をさすりながら相手を睨みつける。くつくつと喉の奥でナギが笑った。
「お兄さんははすを認められない。俺たち狩殺以外に、認められる奴なんていないんだよ」
「そんなわけないだろ、俺はすちゃんのこと大好きだからね。認めちゃってるからね嫁として」
「ちょ、やめて。そういうのやめて。はすが汚れるから。はすが汚れきっちゃうから」
「いやいやいや汚れないから。俺の好意で人が汚れたりしないから。君俺の事なんだと思ってるわけ?」
 一瞬。本当に一瞬。変な間が降り落ちたような気がした。
「…お兄さんは認められないよ、だってはすの事何も知らないでしょ」
「…流したよね、今確実に流したよね。さり気なく話元に戻したよね。絶対よくないこと思ってんじゃん」
 けたけたと乾いた笑い声を響かせつつ木刀をぎゅっと握りしめる。でもとりあえず、とか言いながら銀時の赤色の瞳がぎらりと瞬いた。
 ――はすは返せないから。
 完全に言い切って上体を低くしながら素早く木刀を薙ぐ、思い切りナギの右手に切っ先をぶち当てて長剣を吹っ飛ばしてやった。
「あらら」
 大して驚いた風もなく弧を描いて吹っ飛んでいく長剣を見送り、腰にぶら下げている派手な装飾の銃を引き抜いて銀時と対峙する。所々で輝く青い石は恐らくはすの胸に埋まっているものと同じだ。にやにやとした笑顔が相変わらず貼り付いてまともな表情は読めなかった。ホルスターからもうひとつなんの飾りもついていないノーマルな銃を引き抜いて銀時の向こう側を意味深に見つめる。
「さてと。お兄さんとお話できて満足したし、そろそろ我が姫の奪還といこうか」
 にやりと笑いながらそう言ってノーマルな銃を空高く放り投げた。
 ――ガンガンガンッ
 盛大な音をたてて装飾された銃が文字通り火を噴く。放られた銃はどうやら石によって威力強化されたらしい派手な銃に見事に撃ち殺されて――同じくらい派手な爆発音と共に綺麗に煙をあげて爆発した。ナギの頭上にばらばらとどこの部品かも解らない金属片が降り落ちる。
「知ってる?」
 ゆったりと言葉を吐き出しながら未だに霧のように残る黒煙を眺めてくるくると銃を弄ぶ。ふわふわと風に掻き消えていくのを見届けるとにまっと三日月型に口を歪めた。


 








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