「…14歳だった、かな」
 ふと先ほどのやりとりを思い出して首を傾げる。
『神楽っていうネ、14歳アル。はすはちっさくって可愛いヨ!年上には見えないアル!』
 悪気のない言葉だったし確かに自分は小さい。認知しているので別段気になったわけでもないが、それでも三つ年の離れた神楽の服が若干大きいと感じるのはやはり悲しくもなるわけで。17歳のくせに150センチ弱というミジンコな自分が悪いわけだが。
「あ、新八。おいーどこにいってたんだよお前ー」
 思いついたような玄関の銀時の声が。結果的に鋭くなってしまった聴覚で通常聞き取れないはずの音を耳に届ける。神楽の溜め息、銀時の店番頼んだだろーという小さく呟かれた言葉。新八だと思われる仕方ないじゃないですかお登勢さんがという、言葉。すべて。常人では聞き取れない、おと。歩く音さえひとつひとつ違って聞こえるのは既に人間ではないという肯定。常人離れした能力。
「びっくりしたネ。銀ちゃんモテないからついに病院の患者さんつれてきたと思ったアル」
「いくらなんでもよぉ、んなことするわけねえだろうが」
「いや、やりかねますよアンタなら」
「新八っ、テメェエエ!!俺をなんだと思ってんだァアア!!!」
「人肌に飢えた狼アル」
「神楽ちゃんだめだっ!!女の子はそんなこと言っちゃだめだ!!」
 その言葉を合図にがらりと引き戸が開けられる。突っ立った形からソファーにゆったりと座る形のはすと引き戸に手をかけたまま突っ立っている新八の目線がばちりと静かに交差した。眼鏡をかけてなかなか秀才そうな子だなあとか頭の片隅でぼんやりと考え、しかし新八の目が見開かれたことを見逃すことはなかった。ぐっと新八が銀時の襟首をつかみあげる。
「銀さんアンタロリコンですか!!?」
 叫ばれた言葉にぴくりとはすの片眉が反応する。別に怒っていない、別に、おこっては。いない、のだ。半ば言い聞かせるように言葉を頭の中で響かせる。
 身長こそ小さいものの、はすの顔はなかなか大人びている。それは17歳という年のせいでもあるが半分以上は顔の性質というもので、決して童顔というわけではない。ない、のだけれど、完成した大人の顔というわけでもない。つまりは可愛いとも綺麗ともいえる複雑ではあるが美しい顔なのだが、それが新八には童顔に見えたようで。


 








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