「"鬼姫"…?」
 ぱっちり開いた大きな双眸が、茶色に"名前"を呼んだ人物を映す。きょろりと銀時を見上げるはすは至極当然に先程と変わらない声音で言った。
「なんでしょうか」
「…うぉわァアアア!!!」
 間髪入れずに目を覚ましたはすに一拍遅れて銀時の盛大な悲鳴が響き渡る。思わず後方へ仰け反ると勢いがよかったのか背後の机に頭をめいいっぱい打ち付けて、なんだか結構殺人的な音をたてながら床にぶっ倒れた。
「銀時さまっ」
 慌てたように言いながらはすがソファーから下りて銀時を細い腕の中に抱えあげる。もにゅん。と銀時の頭がはすのふくよかな胸部に埋まった。細くて小さい体からは想像できないような予想外の豊満なバストに思わず一瞬思考が固まる。
「申し訳ありません銀時さま、大丈夫ですか、どこかに異常などは、」
 銀時を抱きかかえたままその打ち付けた後頭部に片手をそえてよしよしと撫でる。こちらを見下ろしているはすは僅かに焦っているような表情を浮かべながら申し訳なさそうにその表情をさらに曇らせた。怒られた子供よろしくしょんぼりしたはすはなんだかやたら可愛くて。無意識ににやりと頬を緩ませた時だった。
「天パァァアア!!」
 大声とともにテレビに夢中だったはずの神楽がはすに飛びかかる。反射的に身構えたはすを無視してそのふくよかな胸に抱かれた銀時を全力で引き剥がすと胸ぐらを掴んで勢いよく後方へ投げ捨てた。
「大丈夫アルか!?あいつは危険アル!消毒するヨロシ!!」
 若干呆けたはす腕をひっぱって洗面所へ連れて行き、キレイキ○イをその小さな手へぶっかける。ごしごしごしごしごしごし!とか音が出そうな勢いで思い切り神楽が手を擦って水で綺麗に洗い流すという行動を三回ほど繰り返した。はすはされるがままにその場で突っ立っていて、何故か必死な神楽の横顔をぼんやりと眺めがらそういえば銀時は大丈夫だろうかとか今更思いついた。



「服をありがとうございます」
 すっかり神楽のチャイナ服に着替えたはすが深々と頭を下げる。神楽はふふんと胸を張りながら歌舞伎町の女王は太っ腹アルとか言ってにこりと笑った。
「はすはどうして敬語アルか?女王様だからって気にする必要はないネ」


 








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