「おーい神楽あ、服かしてくれやあ」
「なんでヨ。銀ちゃんついに変態への扉を開いたアルか」
「開いてねーよ。ついにってなんだよ。開いてんのは新八くんだよ」
「まじでか」
 悪態をつきつつ神楽と呼ばれた色白なチャイナ服の女の子が大人しく自分の服をとりに隣の部屋へ消えていく。江戸では珍しい碧眼とピンクがかった髪をおだんごにした、かわいらしい女の子だ。くるくるとよく動く大きな瞳は神楽の機嫌を忠実に映している。素昆布が好きなのか特大サイズだと思われるそれを片手にしっかりと握って常にがじがじとかじっていた。
 銀時は疲れたよう向かい合って置かれたソファーの一方に腰を下ろして深々と吐息しながらごきごき首をひねった。腕に抱えたはすを放す様子はまったくない。
「銀ちゃん服、持ってきた、ヨ、」
 ひょこりと部屋から顔を出した途端、不自然に言葉をぶち切って神楽の顔が固まった。持ってきたと言う服を銀時が座っている向かい側のソファーへ投げ捨て、忙しく変わる表情がすっと奥の方へと引っ込んでいく。神楽に気付かず腕に抱えた少女を見つめている銀時にひたひたと裸足でホラー映画よろしく近寄った。「こんのドラ息子ォオオッ!!!!」
「はあっ?」
 困惑しきった銀時を完全に無視して腕から少女をひったくり、ついでに一発ぶん殴る。ふぐぁああっ!!とか叫びながらソファーごとふっとぶ銀時を見送るとひったくった少女をもう一方のソファーへ丁寧に寝かせた。なんの服を着ているかと思えば病院の患者さんが愛用している妙な黄緑色のそれ。神楽が気持ち悪いものでも見るように銀時を眺めやった。
「銀ちゃん最低ヨ。キモイアル。病院の患者さん誘拐するなんて女の敵ネェエエっ!!」
 言っているうちに何かのスイッチがはいったのか倒れている銀時に馬乗りになって両頬にばっちんばっちんビンタをはる。
「アンタどこでこんな遊び覚えたアルかァアアっ!!そんな子に育てた覚えないアルゥゥウっ!!私情けないヨォ〜、お父さんになんて言えばいいのォ〜」
 自分の上で散々怒鳴り散らしながら唐突に嘘泣きを披露する神楽を奇妙なものを見る目で見上げる。銀時は鼻から流れ出た血を手の甲で乱雑に拭いながらとりあえず神楽を転げ落としてやった。
「…お前どこで覚えたんだそんな生々しい台詞」
「眠らない街江戸24時、万引きGメンより抜粋」


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