それを肩越しに見ながら自室へ足を踏み入れた。
「…ん、」
 とりあえず布団を敷くべきだろうか、とか悶々と考えていると腕の中で鬼姫が身じろぎながら小さく声をあげて目を覚ました。少しの間視線を空中にさまよわせると自分を覗き込んでいる土方を見つけてびくりと肩を震わせる。大きく見開かれたよくある茶色い瞳がとても綺麗だと思った。
「あの、」
「…噫悪い、俺は土方だ。ここは真選組の屯所。昨日会ったの覚えてねえか?」
「覚えて、おります」
 意識がはっきりしているようなので華奢な体を畳の上に下ろし、ぐっしょり濡れた彼女を抱きかかえていた為に濡れた上着を脱ぐ。困ったように部屋の隅で突っ立っている彼女の茶色い髪や着流しからぽたぽたと雨が滴り落ちて畳を濡らした。箪笥からタオルを取り出して彼女へ放る。
「拭け、風邪ひくぞ」
「…ありがとう、御座います、」
 胡座をかきながら未だに突っ立ったままぐしぐし髪を拭くの彼女の姿をじっくりと上から下まで見つめる。でかい着流しが濡れて体に張り付き、その体のラインをそれなりに強調していた。見る限り、思った以上にスタイルがいいという率直な感想。
「…あの、なんでしょうか」
「――いや、」
 すいっと視線を逸らして押し入れの方に顔を向けながら、それでもちらりと彼女の姿を眼の隅に入れる。思わず見とれてしまった。よく言えば。悪く言えば男の性、だ。
「着替えは俺の服でも着ればいい」
「申し訳ありません、お手数を、」
「気にするな。女中を呼ぶから包帯を代てもらえ」
「いえ、自分で」
 代えられますから。
 言った瞬間ばさりと重い音をたてながら着流しが重力に押し潰されて畳へ沈む。思わず呆けたようにぽかんとする土方を余所にはすはてきぱきと包帯を解き始めた。するすると薄汚れた包帯が畳の上に広がる。
「ちょ、おまっ!」
 胸に巻き付いている包帯をすべて取り去る前に慌てて今し方脱ぎ捨てた上着をひっつかんではすを覆い、すんでのところでなんとか彼女が裸体を晒すことを阻止できて思わず胸をほっと撫で下ろす。何を考えているんだろうか朱鬼の姫君は。着流しを脱げば当然下に身につけているのは下着と包帯だけなわけで、包帯を取っ払ってしまえばそれより下には何もないわけで、というかそれ以前になんだあのえっちなぱんつ。無駄にむらむらする要素がてんこ盛りだったのだけれども。


 








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