つい、最近。それも昨日。狩殺の一番上から直々に保護を要請された鬼姫、だった。意識が無く、頬を軽くひたひたと叩いても何の反応もしない。白い着流しは大きさがあっていないらしくぶかぶかで、着崩れているというのもひとつの要因だったが無防備にもがばりと大きく胸元が開いていた。不覚にもどきりとさせられたが素肌は包帯が覆っていて見えず、なんだか反射的にどきりとしてしまった自分が馬鹿らしく思えた。
 とりあえず屯所に連れて帰ろうと彼女の体を抱きかかえる。見た目以上に華奢で、儚くて、小さな体だった。鬼姫という名とは随分印象の違う、普通の女の子の体。万事屋に保護されていたはずなのにどうしてこんなところでぶっ倒れているんだという疑問が湧き上がって消えた。
「…これ」
 ふと本来"それ"を着ているはずの人物を思い出して無意識に頬が引きつる。白いと思っていた着流しは袖口と裾に青色の螺旋模様が入った至極見慣れたそれで。しっかり保護されてはいるようだったが、万事屋へ向かうよりも屯所の方が近いので帰路を進む。着崩れた長い裾の下からちらりと見えた足は靴を履くのが億劫だったのか素足だ、彼女が倒れていた場所を振り返っても傘すらそこにはない。逃げ出したのだろうかとぐるぐる考えながら、雨水を吸って灰色になっていた胸の包帯が赤黒く色付き始めたので兎に角足取りを速めた。



「お帰りなせぇ、土方さん」
 けろっとして言ってみせる総悟に若干苛っとしつつ、しかし腕にくったりした鬼姫を抱えているので特に何も出来ないまま「おう」とだけ答える。それからとりあえず彼女を自室へ連れて行こうと目の前のさぼり魔を通り過ぎると、そのさぼり魔が興味を惹かれたのか至極珍しいものでも見るような眼をして後ろから付いて来た。小走りに近寄ると土方の腕の中のものを覗き込む。
「この着流し旦那のですねィ」
 青い螺旋模様を見つめて小首を傾げながら答えを促すように土方を見やり、土方が頷くのを見届けると怪訝そうに眉根を寄せた。ずぶ濡れの鬼姫をじっくりと見つめてから口を開く。
「どうしたんですかィ?この娘」
「拾った」
 猫でも拾ったような物言いに総悟が思わずぽかんとした表情をする、あながち拾ったという表現は間違っていないので訂正もせずにすたすたと自室へ向かった。総悟はついて行こうと後を追ったが、局長である近藤に呼ばれて局長室へ渋々連行されていく。


 








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