雨が降っている。雨は冷たいし、暗い。この降っている雨の中に身を投じれば。自分は、消える事が出来るのだろうか。雨に、融けることが出来るのだろうか。
 ずりずりと裾の長い白と青の着流しを引きずって玄関の方へと歩いて行く。まだ万事屋に来て2日目のはすに服なんてものは無く、神楽のチャイナ服では体に密着して傷に障るので銀時の着流しを着用していた。端折りも何もなく、帯でゆるゆると巻いて止めただけ。その為常に着崩れているのだが、しかしぐるぐるに巻かれた包帯が素肌をすっかり隠してしまって例え半裸のように着崩れていようがときめきもしない。さらしのように巻かれた胸と頭の包帯がなんとも痛々しかった。銀時と神楽と新八の三人は久しぶりの仕事に行ってしまって家にははす一人だけだったが、傷口自体は既に塞がりかけているので介助が居なくても特に困ることはなかった。生活のかかった気前のいい仕事なのでどうしても抜けられず、渋々三人ははすを一人残して出かけ今に至る。
 傘も靴も身に付けるのが面倒なのでぺたぺたとそのまま素足で玄関から出て行こうと引き戸に手をかけた。がらりと戸を開けると冷たい外気が肌を刺したが特に気にならなかった。ざーざーと音をたてる雨を見つめながらずきりとした腹を無視して足を外に踏み出す。玄関先から続いている階段を使わずにそのまま飛び降りるとばしゃりと濡れた地面に着地した。



 雨が降っている。ざーざーと音をたてながら降り落ちる雨は薄暗かった。傘を差していてもばちゃばちゃと地面で跳ねる雨が隊服のズボンを濡らしてぐっちょりと肌寒い感触、早く屯所に帰りたかったがどうせ走っても余計濡れるだけなので足取りは遅いままだった。これだから雨の日は嫌いだ。見回りに行くだけで重労働。それに。
「…総悟の奴は逃げるしよ」
 必ずあのさぼり魔は来ない。
「…あれ」
 小さく呟いて思わず口の隅に引っかけていた煙草を落っことしそうになる。道の、ど真ん中。に。人が至極自然にぶっ倒れていた。ばちゃばちゃと警察の義務として水溜まりを踏み潰しながら急いでその人に近寄って抱き起こす。泥水で汚れた白い着流しはどこか見覚えがあるような気がした。かくん、と俯いていた顔が人形のように動いて空の下に晒される。濡れた茶色の髪が頬に張り付いていた。
「こいつ、」
 目を見張りながら言って頬に張り付いた髪をはがして顔をよく覗き込む。


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