(ロイ→クラ前提ロイ+アルテスタ)
「好きだったんだろーな、」
「……?」
「あの時から、」
暗く、静かな部屋に響いた声は僅かながらも震えていた。
部屋の隅、暖炉の前へと視線を向ける。
わざわざ暖炉の前に移動させた椅子に座りながら、赤い服の青年はポツポツと呟きはじめた。
「──最初はさ、気に食わないからムカついてんのかと思ってた」
青年はそのまま椅子の足を傾かせ、酷く不安定な状態で椅子を鳴らす。
手袋の外された手の甲につけられたエクスフィアが、暖炉の炎を映してチラリと光った。
「だけど、気付いたんだ。……アイツが居なくなってから、はじめて」
何と声を掛けるべきか解らず、結局そのまま静かに耳を傾けた。
彼とあの方の関係に、己が口出しするようなものでもなかろう、と。
しかし、それでは一体どうしろというのか。
「はは、情けねえよな、俺……。アイツが居なくなってはじめて、その事に気が付くなんてさ、」
部屋を包む静寂の風は冷たく皮膚を刺す。
それはまるで彼の胸中を表しているかのようで、ジクジクと目の奥が痛んだ。
ただただ、彼から離れた机の隣に立ち尽くすことしか出来ない。
静かに思いを吐露していた彼が、ふと伏せていた眼をもたげる。
強い、意志有るものの光を宿すそれが、暖炉の炎に揺れた。
「──俺は、クラトスが好きだ」
その表情に、あの方の面影が重なる。
確かな血の繋がりを、そこに見た気がした。
そっと眼を閉じ、顔を伏せる。
例えば、お前たちは親子なのだぞと諭したのなら。
あの方は確かに父で、敵であるのではないのかと告げたのなら。
そんな考えが、頭を過った。
しかし、あの方の息子である彼もまた、一度決めたら決意を曲げない性格だ。
良く言えば真っ直ぐ、悪く言えば頑固者。
全く仕方のない、と思わず溜め息をついてしまっていた。
──ならば、己が言うべき事はひとつ。
繋いだ手を離すなと爺が云った
(確かに繋がっている細い糸を、断ち切られることがないように、)
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時系列的にはクラトスがロイドの実父であると解った後辺り。
アルテスタさんは良いお爺ちゃんだと思います。
そしてロイドのベクトルがクラトスへ。
20110205