澄んだ青空に人工的に作られたであろう光がキラリと流れた。これからまたどこかで人が死んで、機械が死んで、街が死ぬ。先を急ぐ光を目で追うと、空を貫くエレベーターが嫌に目に付いた。ほんの数日前、わたしは乗りたくもないあれに乗せられて、大好きな人を宇宙に残したままわたしだけこの地上を踏まされることとなった。


「ティエリア 」


この声は宇宙にいる彼に届くはずもなく、すっと静かに、誰にも気付かれずに人混みの中に消えていった。彼へ抱いている感情は昔も今も変わらずにわたしの心の中に残ったままだ。彼も同じ気持ちだったらな、と、考える。まあ、きっともう彼はそんなことを考える余地すら持ち合わせていないだろう。つまり、きっと彼はこの世には居ない。






それは突然のことであった。今からほんの数日前の出来事であろう。彼が任務から戻ってきた途端、わたしの腕を引いて無理矢理あのでかい金属の塊へ導いた。名前を呼び掛けても肩を叩いても、彼はただ無言でよくわからないレバーを握っていた。たどり着いたのはそう、宇宙と地球を繋ぐ道だった。


「ちょっとティエリア、急に何のつもりなの‥」

「地上へ下りろ」

「はっ?」

「いいから早く地上へ下りろ」


勿論、理解不能であった。ティエリアと喧嘩をした覚えも無ければ、ティエリアを怒らせた覚えも無い。何故だと問い掛けても「地上へ下りろ」の一点張りであった。


「ほんっと、訳わかんない」

「俺はいつもそうだ」

「わたしのこと嫌いになった、の?」

「そんなことは一言も言って無い」

「じゃあ何で、」

「お前は知らなくていい」

「知らなくていいはずないじゃん!だってわたしはっ」


「お前が、俺の彼女だからだ」背中を優しく押され箱の中へ飛び込むようにして入った。そのタイミングを待っていたかのように、扉が閉まる。その言葉を最後に、ティエリアの姿が見えなくなった。エレベーターの中で一人悶々と言葉の意味を考えたけれど、理解にたどり着くには程遠かった。







「わかった、今日だけなんでも許してあげるから、そのかわり絶対に死なないでね」


もしあの時わたしがあなたにこう言えていたのなら、わたしだけこのつまらない世界に取り残されることはなかっただろう。あれが彼なりの愛情であるとわかったのは、ソレスタルビーイングの壊滅の知らせを耳にした時だった。本当に、


「勝手に死ぬな、ばか」


最期まで不器用なひと。





くらい部屋で本を読んでも歯を磨かないで眠っても今日がいつだったか忘れてしまっても、わたしはまるでぴんぴんしてる。宗教も教養も人格ももたないわたしは、すべてをもってるひとよりまるまるしてる。世の中ってふしぎ。神さまはわたしをつくったこと忘れたみたいに世界をまわす。
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(110125) cv.kmy さまへ
ジャムパンをお腹いっぱい / tieria

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