嗚呼、と何度溜息を吐いただろう。

夏、青色の絵の具を子どもが塗りたくったような青空、うるさいくらいの蝉の声。裏庭で生徒たちとサッカーに興じる彼はこんな私の気持ちなんか知りもしないんだろう。
私は彼に恋をしている。とても不毛な恋だとわかっている。それが苦しい。いっそバカで単純で向こう見ずな人間だったらと何度思ったことか。こうも自分が恋愛感情を隠せるとは思わなかった。

裏庭から声が聞こえなくなったのに気がついて職員室に向かう。純粋な一生徒としての質問のためだ。天文学の課題が一向に進まないのだ。ノートと参考書と、ああ、ペンも持って行かないと。
職員室には進路相談の生徒や私と同じような理由でいる生徒、それから数人の教師。目的の人はそこにいて声をかけると額に絆創膏を貼った顔がこちらを向いた。

「お、質問か?」
「はい。どうしたんですか?それ」
「あいつらとサッカーしてたら転けてな。決めるはずだったのになー」
「あははは、程々にしてくださいよ。陽日先生。」
「おう!次は絶対決めるからな!」

話題は自然と課題のことになった。予めわからないことは上げておいたので質問をする。陽日先生の教え方はわかりやすいからいい。

「ああ、なるほど。」
「わかったか?」
「はい。これで期限に間に合いそうです。」
「またなんかあったら聞きに来いよ。」
「そうさせてもらいます。」

ふと視界に何かが入る。橙の髪に小さなローリエに似た小さな葉っぱが見えた。一緒にサッカーをした生徒は面白がって教えなかったんだろうな。星月先生は単純に気づかなかったか面倒臭かったからか。

「先生、葉っぱ、ついてますよ。」
「え?どこだ?」
「違います。こっち、」

先生は全く見当違いの場所を探るから、思わず手が伸びた。

「あ、」

先生が私の指と一緒に葉っぱを取った。ほんの一瞬。指先は敏感に熱を感じた。

「とれたとれた。教えてくれてありがとうな。」
「い、え...では」

触れた指先が妙に熱い。心臓が早く脈打つ。どうやって教室に帰ってきたんだろう。

「す、き、」

まだ、空は、でたらめに、青かった。


きっとのせい

130113
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