雨垂れの旋律に告ぐ
気づけば屋上で告白した春から夏になる前の梅雨になっていた。
琥雪とはいい関係でいられている。この前、抱き締めると恥ずかしながらも背中に手を回してくれた。かわいいと想う。
「のろけ話はもう結構ですよ。」
「…悪い。青空」
放課後の音楽室には外からの雨音と俺たちの呼吸と青空がたまに弾くピアノの音で満ちていた。今日は部活がないらしい。
青空にはたまに相談にのってもらっている。音楽室に用のあるやつなんて限られるから、あまり聞かれたくない話をここでする。
「本題はこっからだ。」
「何ですか?」
「たまに、俺に誰かをみているみたいな感じがするんだよ…」
ふとしたときに琥雪の眼の憂いが濃くなるのを僅かに感じていた。かといって俺を拒絶しない、手を繋いでいると強く握ってくる。
「他に想い人でもいるんじゃないんですか?それか、犬飼君の勘違いか。」
「お前ってなんかたまに辛辣だよな…ガラスのハートだよ、俺。」
「はいはい。」
浮気なんてしないやつだからそういう類いの心配はしてないが、たまに不安になる。
「星月さんは謎がおおいですからね。まあ、ミステリアスというんでしょうけど。」
「まあな。でも、本当は寂しがり屋で、何でも独りで抱え込むんだ。そこがほっとけないというか何て言うか…」
「………それだけ彼女のことを想っているなら大丈夫なんじゃないですか?」
抱えているものは知らないけど、俺にも分けてほしいと思う。
「…ああ、ありがとな。青空。」
一人を愛するのはこんなに苦しいと知った。