月子先輩が前髪を切ってくれた。中3の冬に一回切ってそれからだったから、目は完全に前髪のなか。私はそれでよかったけど、月子先輩は容赦無く、ぱっつんにした。こんなに視界がクリアなのは久しぶり。 「どうしたんだ?」 星月先生が登校してきた私をみて言った一言。気付いてもらえたのが嬉しくて、ちょっとだけ口角があがるのがわかった。可笑しいな、ポーカーフェイスは得意だったのに。 「月子先輩が切ってくれたんです。…ヘンですか?」 星月先生はおもむろに私に近づいて、私がかけているダサい黒縁眼鏡をとった。おかげて視界はボンヤリしている。 「うぁ、か、返してください!」 「……ふむ。」 「何も見えないんですから!」 「…ああ、悪かった。ほら」 星月先生は眼鏡をかけてから、私の頭をぽんぽんとたたいてデスクに向かった。変な星月先生だ。 「お前、コンタクトにしないのか?」 「両親に渡されましたけど、未開封です。何か眼球に触れるのが怖くて。」 「ふーん…」 「…なんですか?」 「いや、何でもない。」 星月先生、今日はホントに変だ。 眼鏡を外すと美少女。 コンタクト嫌いでよかった。敵は少ない。 110206 |