正夢



同じ夢を何度もみる。

広大な平原とうるさいくらいの星の瞬き、ひしめき合う極彩色の星雲。宇宙を凝縮したような酷く美しい世界。

そんな夢で私は郁に会う。
穏やかな風が吹く平原を彼と手を繋いで歩くだけ。言葉は要らないに等しい。繋いだ掌からの温もりやたまに微笑むだけ。それで十分だから。

"記憶の引き出しにどれほど彼が収まっているのか"と訊かれたらきっと"収まりきらない"と答えることができる。それがとても幸せで寂しい。収まりきらない記憶はこぼれ落ちて消えてしまう。
それを彼に話すと

「じゃあ、もっと記憶を増やそうね。」
「どうして?私は消えていく記憶が悲しいのに。」
「だって、夢にも僕がいて、君の記憶にも僕が収まりきらないくらいいる。ちゃんと僕に染まってくれている。もっと記憶を溢れさせて消えていく先も僕で染めたい。」

とても子供染みた独占欲。
それが堪らなく愛しく感じる。彼は万の愛を語らないけれど、那由多の愛を私にくれている。その分を返せているかわからないけれど、彼は幸せだと言ってくれる。だから私も幸せ。


携帯の着信音で目が覚めた。
少々ばかり恨めしく思いながら携帯を開くと、夢の中にまでいる郁の名前が11桁の数字といっしょに表示されている。ついさっきの恨めしさはどこへやら。


「また夢を見たの。郁と手を繋いで歩いついる夢。」


















◎素敵企画サイト『星にkissして、俺のすべてを君にあげる』様に提出
ありがとうございました。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -