だいだらぼっち
ひとりぼっち。
先輩はそれは難しいことだね、と苦笑した。私はそれに首を傾げる。
『ひとりぼっち』はただ『ひとり』になればいいのだから、そんな難しいことじゃないはずなのに。
まだ首を傾げる私に誉先輩は頭を撫でながら、首がとれちゃうよ と言った。それは嫌だ。私は首を傾げるのを止めて、誉先輩を見つめた。
「じゃあ、君と僕が、今、ひとりぼっちになったとするよ。」
繋いだ手を離す。
熱がなくなって寂しくなった。
「はい。」
「でも、僕らはひとりぼっちになってないね。」
「…?」
私はひとりぼっち。先輩もひとりぼっち。でも、今私たちは手を繋いで遠回りの帰路を歩いている。これじゃあ、ひとりぼっち じゃなくて、ふたりぼっち。なんだか不思議だ。
「ふたりぼっちです。」
「ふふ、それは悪くないね。」
私は誉先輩のきれいな手を強く握った。先輩も強く握り返してくれた。
「じゃあ、寂しくないですね。」
「ね。ひとりぼっちになるのはすごく難しいことでしょ?」
「ほんとだ…」
神様が創ったらしいこの世界には70億のひとりぼっちがいて、70億の寂しいがあって。それらが少しばかり傾いている惑星に集結しているのだ。これは、ひとりぼっちなんかじゃないや。ひとりぼっちになれない。ひとりぼっちになれないなら、寂しくもない。
「解決したみたいだね。」
「はい!」
先輩はまた頭を撫でながら笑った。
箱庭で息をする。◎song by:だいだらぼっち/RADWIMPS
素敵企画サイト『60億回目の息』様に提出。
ありがとうございました。