臆病なコンキスタドール
少女はあまりにも自由で純粋で閉じ込めておくことなんて出来やしないのだと知ったのはこの感情を受け入れてからだ。
「先生」
雨上がりのきらきらとした陽光の中を少女が俺の手を引いて歩く。きっとこれは夢だ。少女の顔が見えない。ただ、淡い花のにおいと俺を呼ぶ声と引かれる手の温かさが妙に現実味を帯びて夢を犯していく。
嗚呼、と溜息がでた。するりと離れようとする少女の手を縋り付くかのように握り締める。
「行かないでくれ」
夢ならば言ってしまおうか、誰にも明かせない胸の内も、この心臓をきつく締め上げる感情の名前も。
覚めないでくれ。
どうか、どうか。
臆病なコンキスタドール121013
happy birthday kotarou.h