その温度が僕を泣かせる


休日の朝寝坊ほど気持ちのいいものはないんじゃなかろうか。まどろんで、まどろんで、ひやりとしたシーツの方へ手を伸ばしたりする。リビングに通じるドアの向こうには俺の嫁さんが軽めのご飯を作ってくれているんだろうなあ。こういう朝っていいな。結婚してよかった。
そろそろ起きてもいいんだが、ここはなんというか起こしてもらいたい。某番組の新婚さんの朝ごはんじゃねえけど、起こしてもらいたい。そんなことを考えているとドアが空いた。幸いにもドアには背を向けていたので狸寝入りもバレないだろう。

「隆文。」

反対側に腰を下ろしたのかベッドが少し揺れる。

「たーかーふーみー」

体を揺すられて名前を呼ばれる。あー、やっぱいいな。こういうの。でももうそろそろ起きよう、可愛くてたまらないが、朝から些細な事で喧嘩したくない。

「んー...」
「起きて。ご飯冷めちゃう。」
「あー...」
「目が覚めた?」

顔を覗きこまれたのでこれ幸いとキスをしてやった。

「はよ。」
「...びっくりした。おはよ。」
「もう一回やるか?」
「ご飯冷めちゃうって。」
「はいはい。」

ライ麦パンのサンドイッチとインスタントのカップスープ。それからカットフルーツ。

「うまそー」
「コーヒー?紅茶?」
「コーヒー。」
「はーい。」

開けっ放しの窓から心地いい風が吹き込んで、また、こういう朝っていいなって思った。寝癖を残したままの可愛い嫁さんがエプロンして、うまい飯作ってくれて、名前呼んで起こしてくれて、コーヒー淹れてくれて、向い合って食べるって、すごくいい。幸せってやつだ。

「はい、おまたせ。」
「おー、ありがとうな。」
「いただきまーす。」
「いただきます。」

結婚してよかった。


しあわせにいて


  
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