真夜中の飾り
朝、目を開ける。顔を洗う。昨日のうちに用意しておいたカットフルーツを朝食代わりに食べて、歯を磨く。睫毛を気休め程度にビューラーでカールさせて、制服に着替える。髪を整える。髪型はハーフアップでいいかな。今日は体育や美術もない。飾りのリボンはどれにしよう。
「んー......」
スカーレット、カナリア、ラベンダー、ミッドナイトブルー。
迷っていると、ポコン!とスマートフォンからメッセージ音が鳴る。月子ちゃんかなと思ってチェックすると、表示には水嶋郁の文字。ちょっと気分が上がる。次の連休のデートのことだ。デートと言っても郁の大学の学祭に行くだけなんだけど、どうせならデートしようって。
やりとりをしながらリボンを眺める。やりとりもそこそこにミッドナイトブルーのリボンを取る。ベルベットの肌触りが気持ちいいお気に入りのリボンだ。
「うん。」
いい感じにできた。他愛のない雑談に変わったメッセージ画面を開いてメッセージを打ち込む。
「今日は、郁の髪と同じ色のリボンにしたよ、と。」
ミッドナイトブルーは彼の色だ。私が恋した色。
「いってきまーす。」
小さなあくびをひとつ、部屋に置き去りにして、部屋に鍵をかける。
今日はいいことあるかな。
20141105