プリズムハート




琥雪先輩が大人っぽくなった。もとから大人っぽかったけど、最近になってそれが増した。

「琥雪先輩。」
「…木ノ瀬。どうかした?」

ほら、振り向くときに髪を耳にかける仕種とか、

「お昼一緒にどうですか?」
「うん、いいよ。」

ふわり、前より自然に笑うようになったりだとか、すごく些細なことだけど、確実に先輩に変化があった。それに気がつく度に鳩尾の奥がぐしゃりと泣く。

先輩。その指輪どうしたんですか?先輩はアクセサリーは煩わしいから着けないって言ってたじゃないですか。だから、僕は先輩に、先輩が好きだと言っていたキャラクターのマスコットをプレゼントしたんですよ。随分前なのに、先輩、今も鞄に付けてくれているじゃないですか。

「先輩、まだそれ付けていてくれるんですね。僕は嬉しいです。」
「だって木ノ瀬がくれたものだし、これ好きだから。ちょっと汚れちゃったね。」

ああ、僕は琥雪先輩が好きだ。どこか不安定で手を握っていてあげないといけないようなこの人が好きだ。けど、その手を握る人はもう居るんですね。その指輪の人。今の先輩をみると僕はその手を奪い取ることは出来ない。

僕の手は空っぽのまま先輩の残光を見つめるんだ。










浅はかな観測






110613


  
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -