水葬のステラ・マリス
水の夢をみた。
水の中だと気がついたのは息を吐き出したとき、泡沫が光で白む青に吸い込まれていったからだった。
この夢を水の夢と名付けていいのかは疑問だけれど、ひどく心地好かった。一種の胎内回帰現象に似ている気もした。
また、息を吐く、
やはり泡沫はやわやわと形を変えて青に消えた。
幾度目かの息を吐ききった私は黒い青に沈んだ。
目をあけると保健室の天井だった。
「起きたか…。」
「…?」
「教室で倒れたんだよ、お前。」
夢と違って白い。
「どこか痛むか?」
「…平気、」
光に慣れないせいか視界がぼやける。幾度かまたたいても、それは解消されない。
「怖い夢でもみたか?」
そう言って兄さんが私の頬を撫でた。
ポロリ。
雫が落ちた。どうやら涙のせいで視界がぼやけていたらしい。
「…水の、夢をみたの」
怖い夢なんかじゃない。
「水?魚にでもなったのか?」
「…そうかも、知れない」
でも最後にみたのは昇り逝く泡沫を掴もうとする私の手だった。それを告げると兄さんは、じゃあ人魚にでもなっていたのかもな。と微笑んだ。
北極星に焦がれた人魚そして、涙する。
110421