エンドスプリングララバイ
かくれんぼは得意だった。隠れたら最後まで見附けてもらえない。
私の恋心のようだ と思う。
すこし違うのは最後までじゃなくて最期まで。最愛を想いながら迎える最期も悪くないのかもしれない。躯は老いても、想いはそのまま。
…報われない、なぁ。
「ゆきんこーっ」
「琥雪先輩」
ぼーっとしていると後輩たちの声に呼ばれた。そういえば、お昼を一緒に食べるんだった気がする。
「どこで食べます?」
「日影。」
「ゆきんこは日影が好きだな。」
「たまには屋上で食べましょうよ!」
「そうだぞ!日向ぼっこだ!」
2人に腕を引かれ、あっと言う間に深い青空とこんにちは。ベンチに座って2人は宇宙食、私はお弁当。今日の卵焼きはうまくいった。
「宇宙科って大変ね。」
「慣れればどうってこともないですよ。」
「ゆきんこの卵焼き美味しそうだぬーん。」
頭一つ高い位置から天羽が目をきらきらさせていた。卵焼きのひとつを箸でつまんで天羽に差し出す。
「どうぞ。」
「うぬっ!」
「翼!先輩、翼ばっかりズルいですよ!」
「はい、木ノ瀬も。」
木ノ瀬にも天羽同様に差し出すとキョトンとしてからパクリと食べた。
「間接キスするなら先輩としたかったです。」
「俺はしたー!」
「つ、ば、さ。」
「ぬわわっ!痛い痛い!!」
木ノ瀬が天羽の頬をつねってやめない。私がこのまま箸を使えば間接キスになるのだけど。
まあ、言わないでおこう。
春が終わった初夏。
私はその熱をはかりきれないでいた。
110413