ほろり、ほろり




「あ。」
「どうかしたのか?錫也。」
「理科室に忘れ物した。」

それに気がついたのは帰る準備をしていたときだった。

「ついていこうか?」
「いや、先に2人で帰ってくれよ。すぐに追い付くから。」

2人と別れて、早足に理科室に向かう。あ、鍵がいるから職員室が先だ。




「え、ないんですか?」
「貸し出しててな。ちょっとまってろよ。」

担当の先生に聞くと貸し出し中だった。先生は携帯で誰かに連絡をとっている。

「まだいるから来るなら早く、だそうだ。」
「ありがとうございます。」

今度こそ早足で理科室に向かう。追い付けそうにないと哉太にメールをしておこう。




「失礼します…」
「…ああ、忘れ物?」

ドアを開けるといたのは星月さんだった。もう二年生なのに、はじめて話す。それほど縁が無かった。月子からたまに聞くくらい。

授業で座っていた実験台の引き出しに忘れ物はあった。星月さんにお礼を言おうと近くにいくと何かを作っていた。

「何を作ってるの?」
「お菓子。」
「理科室で!?」

開いた口が塞がらない。すると、星月さんが俺の口に何かを放り入れた。それは、ほろほろと崩れて、懐かしさといっしょに広がった。

「あ、ラムネだ…」
「ラムネってね、ブドウ糖とでんぷんで出来てるの。簡単に作れるからたまにこうして作っているの。」

材料や器具はそれ用だから安心して、と付け足された。
つくってやりたいなぁ…。あいつらに。

「作り方、教えてくれないかな?」
「…いいよ。じゃあ、炭酸入れよう。シュワシュワして口当たりがいいよ。」

星月さんは解説しながら手際よく進めていって、白い棒状の塊ができた。

「本当にカンタンにできるんだ。」
「これを切って、乾燥させるの。まだ固まりきってないけど、どうぞ。」

口の中に入れると、シュワシュワと溶けていった。

「こっちのほうが好きかも。」
「そう。それはよかった。それよりいいの?お友だちが待ってるんじゃない?」
「え?」

星月さんが指さした窓の先にはあいつらが待っていた。

「あの、これ、」
「…?」
「貰って帰っていいかな?」
「どうぞ。」

貰ったラムネをルーズリーフに包んで鞄にしまった。あいつらが喜ぶような気がするから。










110314
元ネタ、3月のライオン
初めて錫也をだした。
3月のライオンを読んでいたら止まらなくなった。


  
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