多分きっと、それだけ
秋は空が高い。
これを説明すると地軸が傾いているからだとかいろいろある。
「一人か?」
屋上のフェンスに寄りかかって空を見ていると不知火先輩がやって来た。
「ええ、まあ。先輩は?」
「サボりだ。」
「青空にチクりましょうか。」
「やめてください。マジで。」
「…冗談ですよ。」
ひとつまばたく。
「飲むか?」
またまばたくと、見慣れた缶コーヒーがあった。
「いただきます。」
先輩の手にも同じものがあった。わざわざ買ってきたのか、この人。タブを上げるのに苦戦していると、先輩が無言で開けてくれた。
軽くも重くもない沈黙が続いた。
「……お前さ、」
「先輩、飲んでください。」
「…………は?」
開けて、二口くらいしか飲んでない缶を差し出すと、先輩はキョトンとした。
「私、ブラック飲めないんです。」
「お前なぁ…」
「せっかくなのでもらったら案の定飲めませんでした。すみません。」
「まぁ、いいけどよ…」
先輩は自分のは飲み終わっていたらしく、何の躊躇いもなくそれに口をつけた。
「不知火先輩。」
ぱちくり。目が合う。
「なんだよ。」
「間接ちゅー。」
「…ぶはっ!」
口にコーヒーを含んでいたらしく、盛大に吹いた。
あーあ、汚い。
「先輩汚い…。」
「ゲホッ、ゴホッ!…俺は琥雪が悪いと思いまーーす!!」
噎せていたと思ったらグラウンドに向かって叫び始めた。汚いの次は煩い。
「私は先輩のズボンのチャックが開いてると思いまーす。」
ぱんつ。え?いつから?いつから?
さぁ?
110201