ウブだね、悪い意味で





「なぁ、琥雪。」
「なんですか。」
「これはどういう状態か説明してくれないか。」
「青空から逃げていた不知火先輩が私を巻き込んでこの狭い掃除用具入れに隠れたんですが、何かの拍子に鍵がかかりでられなくなった。というところでしょうか。」
「嫌に冷静だな…」

少し混乱気味の俺に対して涼し気な顔をして俺を見上げる琥雪。
内側から鍵は開かない。そして、放課後でほとんどの生徒が部活や寮に帰っている。
つか、何なんだこいつの色気は!生殺しじゃねぇか!

「クソ。開かねぇ…」
「あつ…」

よりによって夏だ。狭い掃除用具入れで密着状態。長い間この状態は非常にまずい。…いろんな意味でだ。

「先輩、携帯電話持ってます?」
「あ、確か………」

なるべく琥雪に触れないようにポケットをあさるがそれらしきものはない。おそらく生徒会室のデスクに放置している。

「無さそうですね。」
「お前は?」
「先輩に引っ張られて走ったときに落としました。たぶん青空が拾ってると思いますけど。」

溜め息ひとつ。

「溜め息つくと幸せ逃げるぞ。」
「誰のせいだと思ってるんですか。誰のっ。」

ガンッ!!
おとなしくしていると思った琥雪が俺の後ろにある扉を蹴った。

「うおっ?!!お前ぇえ!蹴るなら一言言え!」
「耳元で騒がないでください。」

ガンッ!

「だから一言言えっての!」
「蹴りました。」
「事後報告!」

それから何回かこの件を繰り返していると、第三者の声が聞こえた。

[一樹?]
「誉か!?」
[何してるの?]
「いろいろあって出られなくなった!鍵がかかっているはずだ、開けてくれ!」

運よく誉が通りかかったらしい。これで生殺しみたいな状態から脱け出せる。

「金久保先輩助けてください!不知火先輩がっ」
「バカっ、おま、誉が勘違いするだろうが!!」
「琥雪ちゃん!?」

勢いよく扉が開いて、俺がバランスを崩している間に誉は奥にいた琥雪を引っ張りだしその腕中に納めていた。

「大丈夫?一樹に何もされなかった!?」
「…いきなり、押し込まれて、」
「いいよ。無理して話さなくて怖かったでしょ?… 一 樹 。」
「待ってくれ誉!違う!!」
「何が違うのかな?」

誉の絶対零度の笑顔と琥雪のしたり顔を最後に俺はブラックアウトした。









やすみ、トレスシファー


110107


  
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