モモ、母さんへ
このメモ帳をモモが読んでいるのが果たして俺が死んだ何年後なのかは分からないが、このメモ帳を見ているということはお前は立ち上がる事ができたってことだよな。
まずは言わせてくれ。 ごめん。 こんな結果になって、いや違うな。 こんな選択しか出来なかった俺を許してほしい。
この選択をする事によってモモや母さんは酷く悲しむんだろう。 家族が二人も死に別れすることになってしまったのだから、当たり前だ。 それは十分俺も分かってた。
分かってはいたけど、でも、限界なんだよ。
苦しいんだよ。 辛いんだよ。 もう、死んだように生きる日々に疲れたんだよ。
身勝手だって解ってるんだ。 この選択が間違いだって知ってるんだ。
でもな、俺はもうだめなんだ。
何をしても、何をしようとしても、浮かぶのはクラスメイトや先生から言われた言葉なんだ。
高1の夏休み明け初日、俺はアヤノ・貴音先輩・遥先輩の死を知ってしまった。
そして、クラスメイトや先生からお前のせいだって、お前が殺したんだって、指を刺されて言われた。
友人三人が死んでも顔色ひとつ変えない俺は気味悪いんだって、皆が口をそろえていった。
なあ、俺から表情を奪っていったのは誰なんだよ。
泣いても誰も助けてくれないぞって言ったのは、笑うな気持ち悪いって言ったのは、なんで生きているんだって言ったのは誰なんだよ。
俺は好んで一人で居たわけじゃない。 本当はずっと友達が欲しくて堪らなかった。
休み時間には友達とサッカーとかして遊んだり、そんな普通の男の子だったら誰もが経験するような事を俺だってやりたかった。
でも、そんな普通をオレから奪っていったのはクラスメイトと先生だった。
こんな俺と遊ぶ奴なんて居ない。 テストの点数だけで嫌われ、疎まれて、そしてずっとずっと一人で居た俺に、人と話すスキルなんてありゃしない。
好きな娘が泣いてたって、なんて言葉をかけていいのか分からない。 人と話した経験が少なすぎる俺には難易度が高すぎた。
なんで、だろうな。 俺きっと、アヤノや貴音先輩・遥先輩が生きてさえ居てくれたなら耐えられたんだよ。
クラスメイトから何を言われたって、あの3人が居てさえくれたなら俺は生きていけたんだ。
あの3人と出会って俺は、学校帰りの寄り道が楽しいことを知った。
放課後に買い食いして笑い合う楽しさを知った。
人と過ごす楽しさを知った。
俺は高望みしたわけじゃない。
ただ、人並みに友人と学校生活を楽しみたかっただけなんだ。
なのに、なんで奪うんだよ。 なんで俺から全部奪っていくんだよ。
なあ母さん、俺なんでこんな頭いいんだろう。 なんで、一度教科書を読んだだけで全て分かってしまうんだろう。
なんで俺はこんなにも人から嫌われるんだろう。
俺がもしもこんな化け物見たいな記憶力の良さとか、頭の良さが無い普通のそこら辺に居るような男の子だったら友たちできたのかな。
人に疎まれずにすんだのかな。 先生から嫌われずにすんだのかな。
ねえ、母さん。
俺母さんのこと大好きだ。 父さんのことも大好きだ。 勿論、桃のことも大好き。
この死んだように生きた数年間俺の支えとなってくれたのはいつだって家族だった。
そんな家族を苦しませたくはないけど、でも、ごめんなさい。
親不孝者でごめんなさい。 生きられなくてごめんなさい。
苦しめてごめんなさい。
さよなら。
如月伸太郎
prev / next