如月伸太郎の鹿野修哉に対する憎悪を超えた無関心の話
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 アジトから帰る途中、ふと公園に立ち寄った。
 鹿野修哉に対し言った事をふと思い出してにやりと笑う。 しかしそれはどことなくいびつな笑みだった。
 唐突に降りだした雨に濡れながら、雨から逃げることもせずにただ濡れながら笑う俺は他の人から見たら偉く不気味に見えただろう。


 ――そう、鹿野修哉は知らない。
 こんな言い方は不謹慎かもしれないけれど、アヤノが居なくなっても側に妹弟がいたお前に、俺の気持ちなんて理解できないだろう。
 俺はあの日、お前のせいでアヤノも、そして遥先輩も貴音先輩も失ったんだから。 知ってるか、お前が俺になりすまして先輩たちに酷いことをいった次の日、俺が何を言われたのか。
 なにがなんだかわからないまま、俺は心の底から信頼していた先輩たちに言われたんだぞ。
”アンタ最低””シンタロー君があんな人だとは思わなかった”って。
 なんでだ、俺は何かしたのか。
 俺はただ、風邪ひいて家で寝込んでいただけだ。
 それなのに、どうしてこんなこと言われないといけなかったんだ。 心配してくれているのかな、なんて考えていたのに。
 それとも俺は友人を作る資格すらないと言いたいのか。
 関係修復したくても、なにも思い当たる事柄がないから出来なくて、とうとつにまた独りにされた俺の気持ちの何がお前に分かるんだよ。

 やっと決心したのに。
 どうやって関係修復しようか、その糸口がやっとみつかったのに。

 夏休み明けて、学校に行ってそうして知った事実に涙すらも出てこない苦しみの、何が分かるっていうんだ。
 ふざけるな。
 なんで、だよ。
 なんで俺は話したこともなかったようなお前にアンナコトされなくちゃいけなかったんだ。
 どうして、俺は――

 そうやって俺を悪者にして、周りから同情を買ってそうして俺を独りにしたいんだろう? そうやってお前はいつも俺を孤独にしてきたんだろう? もう、うんざりだ。
 もう何もいらない。 もう感情なんていらない。 誰か奪い去ってくれよ。 俺の心も、記憶も全部。 全部全部くれてやるから、まっさらになったって構わないから、だから、頼むから。
 そう願っても、全部俺の中にあるまま。 そんなこと知ってた。 でも、そうして全てを投げ出したくなった後にやってくるのは”なんで俺はこんなにも独りなんだ”という虚しさ。

 母もいるし、妹もいる。 なのに、どうして俺の中の孤独は消えてくれないんだ。 目を閉じればあの3人と笑いあった記憶があるのに、なんで今の俺にはそれがないんだ。
 俺は、何もしてないのに。


「誰か、たすけてよ……」


 そう雨の中で呟いた言葉は誰かに届いただろうか。
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