02
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 しんと静まり返ったアジト内、そこに置かれた一つの質素な招待状を机の中央において、其の周りにシンタローとセトを除く皆が集まっていた。
「じゃあ、開けるよ。」
 そう言ってカノが手を封筒に手を伸ばし中から2枚の紙を取り出す。 シンタローとセトが行方不明になってから、もうすでに2週間が経とうとしていた。 来る日も来る日もいろいろな場所を探し続けて、そして警察にも頼って捜索してもらっても見つからない。
「読むよ。」
 一枚目の紙を開いて、カノは口を開いた。

 読み進める度に、皆の顔から表情が消えていく。 読んでいる自分だって、どんな表情をしているのかと聞かれれば無表情と答えるだろう。 実際、色々な感情がカンストして表情が消えたのだ。
 そういう状態になるほど手紙の内容は酷いもので、其の気持ち悪い文面なんて気にもとめずに二人が今どうなっているのだろうと言う考えを巡らせる。
 巡らせたところで分かるはずもないけれど。 でも、ぱさりと封筒から落ちた2枚の写真をみて、目を居開いてしまった。
「これ……」
 震える手でマリーが広いあげて、そして。
 皆の目に映ったのは、独房のような場所に拘束され意識のないセトと、上半身裸の状態で地面に倒れこみ、背中に幾重にも重ねられた蚯蚓腫れが痛々しいシンタローの写真。
「た、たすけ、ないと……」
 そう震えるアヤノの声に、目を手紙に落とす。
 まるで嘲笑っているかのようなその手紙にぐしゃっと手に力を入れてしまったカノは、はっとして2枚目の紙を広げた。
「地図だ……」
「えっ?」
「これ、多分来いってことなんだと思う。 僕達だけで……」
 この赤い丸印のある建物が恐らくシンタロー君とセトがいる場所だ。 恐らくそこは敵地で、僕達だけで行ったらどうなるかわからない。
 でも、此処にシンタロー君とセトが居るのなら行かなければ。
「……皆で行こう。」
 静まり返った室内に響いた声の主はキドだ。 危険なことも、罠である可能性が高いことも分かった上での言葉である。
「そうだね、早く二人を助け出さないと。」
 キドの言葉にカノが同意して立ち上がった。 腕時計をみて、そして手紙に同封されていた地図を持つ。
「ここからこの地図の場所まではそう遠くないから、皆で腹ごしらえしてそれから行こう。 何事も空腹では出来ないしね。」
「ああ。 じゃあ、ご飯を作ってくる。」
 そう言って立ち上がるキドに、手伝うために遥とアヤノが立ち上がった。
 それを見て貴音も立ち上がり声を掛ける。
「じゃあ私と残りので、アジト内に盗聴器とかそういったのがないか探ってみる。」
「お願いします!」
 アヤノが貴音にそう言えば、貴音はガッツポーズして男性陣に声をかける。
「ほら、アンタ等動く!」
「はいはい。」
 そう貴音は急かし、独りになった部屋で表情を消す。
「……嫌な予感しかしないのよね。」
 ぎゅっと握りしめた拳からポタっと赤い雫が滴り落ちて、貴音はそっと窓の外の空を見上げた。


 コツコツと殺風景な白い廊下を歩く。 向かう先はいつもの場所だ。
 最近この道の先に待ち受けている光景が楽しみで仕方がない。 初めこそどうなるのかと想っていたが、思った以上の効果で笑いが止まらないのだ。
「やあ、元気かい?」
「あっ、こんにちは。 元気っすよー!」
 そう言って白衣を着た研究員が鉄の柵で仕切られた独房のような場所の中にいる緑色のつなぎを来た子に話しかけ、そして中からはとても元気そうな声が響く。
「それは良かったよ、セト君。」

 その声はどこまでも透き通って、響いていった。
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