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 何故、こんなことになったんだろう。 俺は平凡な二次ヲタコミュ障ヒキニートだったはずなのに、一体何故。
今のこの状況を簡潔にかけば、俺「如月シンタロー」は狙われている。 何にといえばなんかヤバイ組織としか言い様がない。
「くっそ……」
 スマフォはアジトに忘れてきてしまったし、今俺は正真正銘の一人。 前述どおりひきこもりなので、体力なんて有りはしない。
「いたぞっこっちだ!」
「絶対捕まえろ!」
 後方からそんな叫び声が聞こえ、シンタローは体力を振り絞ってせめてアジトまで逃げるために走る。 こんなところで捕まるわけには行かないんだ。 俺はこの情報を、みんなに伝える義務があるんだから。
 今日俺はとある任務である組織に侵入した。 何故か、一人で。 彼奴等が俺を追ってくるのは、その時に見てしまった何かが必要だからなのだろう。
「(5……0……1……7……1……1……1……)」
 きっとこの数字の羅列は彼奴等にとって大切なもの、尚且つその情報を俺が消したから彼奴等は血眼になって俺を探すわけだ。 そしてきっと相手は俺が頭が化け物じみていい事も記憶力がいい事も知っているのだろう。
「あそこの角を曲がっていけば、あっキド!」
 アジトの前でキドが手を降っていた。 俺のことを待っていたのだろうか、だとしたらありがたい限りだがこの状況では彼女を巻き込みかねない。 しかし、彼女の能力を使えば―いや、相手がもし能力のことを知っていたらどうする? 俺達のことを調べあげていたとしたら。
「キドッ今すぐアジトの中に入れ!!」
「ど、どうしたんだシンタロー……」
「いいからっ早く!」
「わ、分かった!」
 キドが慌ててアジトに入っていく。 俺もその後を追いかけるが、階段で躓いてしまう。
「シンタローさん早く!」
 異常事態に気付いたのか、セトがアジトから出て手を伸ばしていた。 俺はその手を掴んでその日は追手から逃げることに成功した。 アジトに入って息を整え終わると、何があったのか順を追ってシンタローは話しだす。
「……ちょっとヤバイな。」
「すまん……」
「いや、お前一人にこの任務を任せてしまった俺のミスだ。」
「仕方ないだろ、俺しか適任者が居なかったんだから。」
 カノやセト・マリーは今日は別の任務に出ていたし、キドはモモとともにまた別の任務に動いていた。 エネはキドから直々に留守の任務を任され、ヒビヤはコノハと一緒に今日の食材の買い出し。 残るは俺だけってわけだ。 前々に、皆が手に入れてくれた警備配置図と、施設内の図のおかげも有り目的の場所までは誰にも見つかることがなかったとはいえ、やはり情報操作のリスクは高かったわけだ。
「皆の方はどうだったんだ?」
「こっちは別に問題なく任務完了した。」
「そうか、本当にスマン……俺のせいで……」
「もともとこの任務はリスクが高すぎる任務だったんだ。 それをシンタローは一人でこなしてくれた、それだけで十分だ。」
 とりあえず今日は逃げられたことに感謝しておこうと、キドは言いシンタローに晩ご飯を差し出す。
「お疲れ様、シンタロー。 今日はゆっくり休んでくれ。 カノとセトは交代で起きて見張りをするらしいから、安心しろ。」
「え、だってお前ら任務で疲れてんのに……俺がっ」
「シンタロー、お前は今日一番危険な任務を一人でやったんだ。 ……休め。」
 キドになだめられシンタローはその日眠りについた。
 夜中にふと目を覚ましたシンタローは、飲み物を飲むために部屋を出る。 すると、そこにはセトが居た。 今の時間はセトが見張りらしい。 セトは俺に気づくと笑いかけて眠そうに呟く。
「シンタローさん眠れないんすか?」
「いや……ちょっと目が覚めちまってな……」
 シンタローはそう言うと冷蔵庫に入っている飲み物をコップについで、ソファーに座った。
「すまん……」
「何に対しての謝罪っすか?」
「……俺の、所為で、」
「違うっす。 ――カノも、俺も、シンタローさんを責めるつもりなんて無いっすよ。 だって、今回の任務の中で一番危険でリスクが高かったのがシンタローさんの任務だった。 本来は皆でやるはずの任務だったんすよ。」
「……キドと同じこと言うんだな。」
「皆シンタローさんを責める気なんてないんすよ。 大切な団員っすから。」
「そうか。 ……なあ、セト。」
「どうしたんすか?」
「今後、何らかの事件や事故に巻き込まれた時俺がお前の目をじっと見つめたらそれはお前に能力を使えっていう合図だ。 ――だから、遠慮なく読め。」
 突然のことにセトはポカーンとしてしまう。 シンタローの目は真剣そのものであった。
「――で、でも」
「俺を信用してくれ、セト。」
「し、信用してるっす! でも、能力使うのは……」
「お前がこの能力使うの嫌いだってのは知ってる。 だが、その能力で救えるものがあるとしたら、どうする?」
「……わかったっす。」
 その答えにシンタローは微笑んで、頷いた。 めったに笑わない彼の笑顔はとても鮮明に脳裏に焼き付いて、離れない。 何故彼はこのタイミングであんな事いったのだろう、彼は一体何を考えている? 馬鹿な自分では彼の考えていることなど理解は出来ない。 だから、自分は彼を信じて進むだけ。
「じゃあ俺部屋に戻って寝るな。 ――見張り、がんばれ。」
「はいっす!」
 ビシっと敬礼のまね事をしたセトに苦笑しつつ、シンタローは再び眠りにつくべく部屋に入っていった。
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