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 視線を感じた。
 例えば、お風呂に入っている時。 皆と一緒に街を歩いている時。 部屋にいる時。 何故か、何処からか視線を感じていつも恐怖を感じている。
 明らかに俺を狙ったその視線に、意味がわからずに日々追い詰められていく。

 誰かに助けを求めたくても、こんなこと誰にも言えるはずがなくてひたすら耐えるしかない今の状態に少しずつだけど危機感を覚えている。
 でも、どうしたらいいのかがさっぱり分からない。
 何で俺を狙う? なんで、アイドルの妹じゃなく自分に目が向いたんだ? 別にイケメンってわけじゃない、そこら辺に居るようなモヤシだぞ?
 星の数程の疑問が生まれ、答えなど出ないままストーカー被害に開い始めてから1ヶ月が過ぎた。 そんなある日。

 事態は最も望まない方向で進んでいた。

 いつものようにメカクシ団のアジトから帰ろうとした矢先のことだ。 一定の間隔を開けてぴったりと俺の後ろをついてまわる男がいた。 すぐに恐怖の元凶の奴であることに俺は気がついて、無我夢中で走り出す。
 しかし、ヒキニートをやっていた男の体力などたかが知れている訳で。
 あっけなく距離は詰められ俺の左手を、ストーカーをしている奴は乱暴に掴んで、手前に引く。
「うわっ、」
 変な声を上げてストーカーしている奴に突進する俺を力強く抱き寄せたそいつの顔を見て目を見開く。
「お、男?」
 そう、何と俺を付け回していた奴は男だったのだ。
「やっと、捕まえたよ。 僕の女神。」
 そんな事を男は至高の表情で呟く。 完全に目がイッているその男に、はっと気がついて逃げるために暴れた。
 体力なんて気にしている場合じゃない、早く逃げないと。
「は、離せっ!」
 力を入れて男の手を剥がそうとするけれど、その手はピクリとも動かない。
「ほらほら暴れないで。」
 困ったような表情で男は自分のポケットを弄り、ハンカチを取り出した。 はっ、とした頃にはもうそのハンカチは自分の口と鼻を塞ぎ意識が遠のいていく。

 誰か助けてと手をのばそうとしてもその手は俺の意に反して動こうとはしなくて、意識はそこで途切れた。
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