04
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 ふと、目が覚めた。 薄暗い室内と埃っぽい匂いに徐々に意識が覚醒していく。   そして肩に鈍痛が響き、表情を歪めてその鈍痛のところへ手を持って行こうとした。
 しかし――。
 ガチャッと音がしただけで、手をそこに持って行くことが出来ない。
「ふがっ」
 しゃべろうとして、そしてそれすらも出来ないことに気がついて無我夢中で暴れた。 静かな部屋に鎖の音が響いて、そして。
「目が覚めたんだね。」
 そうしてぱっと付けられた明かりに目を細めそして、漸く自分がどういう状態にいるのかを把握する。
 恐らくこれは、女性が子供を生む際に使う分娩台と呼ばれるものだ。
 それに足を開かされた状態で括りつけられ手は頭上で鎖によって拘束されている。
「まったく、頭がいいのにこういう部分は抜けているんだね。」
「……。」
 コイツは一体何が目的だ。 俺をこうして捕らえたということは、俺を人質にしてメカクシ団のみんなをおびき出すつもりか?
 でも、こんな拘束の仕方はおかしい気がする。
「僕達の目的はね、君たちを捕まえて調べて、そしてあわよくば僕達が手に入れる。」
 アホらしい動機だと想った。 こんなの手に入れてどうするというのだろう。「どう想ってくれても構わないがね、君たちの其の能力は使い道次第でなんとでもつかえるんだよ?」
 そりゃそうだろう。 でも、そんなことさせるわけにはいかなかった。 この能力を悪用されて、表舞台に知れ渡ればあいつらは。
「ねぇ、教えてくれるかい? 君たちの能力の、その全てを。」
 男はそう言うと俺の口元を覆っている布を外して答えを待った。 数分が経った頃、割りと冷静になっていた思考回路で俺は告げる。
「いやだね。」
 その答えに男は無表情になる。
「君は馬鹿かい? ここで全てをはかなければ、自分がどうなるのか――そう考えたりしないのかな?」
「お前こそ馬鹿か? オレのことストーカーしてたんなら俺がどういうやつかくらい調べておけよ。 こんなことされたって俺は仲間を売るような情報をお前にいうことなんてしない。」
 怖いけど、でも、助けはきっと来るはずだ。 エネが、きっと助けを呼んで来てくれるはずなんだ。 だからそれまで、俺は耐えるしかない。
 皆を売るような真似、絶対にしない。
「ほう。 君はヘタレとばかり想っていたけど、そうでもないみたいだね。 そういうのってなんて言うのかな。 自己犠牲精神?」
「何とでもいえよ。 でも、俺は何も言わない。」
「じゃあ、無理やり吐かせるしかないね。 ――どんなことをしても。」

 そういって男は俺の首に手を伸ばし、徐々に力を込めていく。 ふさがっていく軌道、息苦しくなっていき生理的な涙が頬を伝う。

 本格的に死を覚悟した所で男は手を離す。
 咳き込む俺をよそに男は俺の頬に手を添え、笑う。
「いいね、その顔。 無表情に彩られた君の素顔とてもかわいいよ。」
 その言葉に目を見開いた。

 そんな、まさか、この男。

「苦しむ君の顔、とてもいい。 絶望に染まった君の顔も魅力的だ。 もっと、もっといろいろな表情が見たいものだね。」

「あ、え……?」

 パニックに陥った頭。
 コイツは一体何を言っているんだ。

 だって、おれ、は男で、コイツもおとこで。
 なのに。

「さあ、君の魅力的な表情をもっともっと見せてくれ。」


 そうして男は、再び俺に手を伸ばした。
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