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 けたたましい音で目が覚める日常。 しかし、今日はその音よりも早く目が覚めた。 時刻は午前8時、いつもより2時間も早くいつもうるさいアイツも今はパソコンの奥深くで眠りに付いているらしく、部屋の中は何処までも静かだ。 だが今日は何かがおかしい。 主に自分自身の体調に関してだが、この程度だったら何もない風を装えるだろう。 心配をかける訳にはいかないからな。
「……おい、エネ。」
『ふぁああ……ご主人、おはようございます。 どうしました?』
「おれアジトいかねぇから、モモに連れてってもらえ。」
『えー、ご主人行かないんですか? 行きましょうよ!』
「いや……マジで無理、勘弁してくれ。」
なんとかそう吐き出せば、エネも納得したのかいってきますと言い残してパソコン上から姿を消した。 今日は母親が泊まりがけの仕事に行っている日、そしてモモもエネと共にアジトに寝泊まりするんだと意気込んでいたから今日は俺独りだろう。 久しぶりに羽根を伸ばせる時間、しかし、こういう時に限って体調が思わしくない。 本当についてないな俺。
「お兄ちゃんなんで行かないの?」
「体調が……」
「またそんなこと言って、今日暑いから出たくないだけでしょ?」
「違うって……」
「今日お兄ちゃんと団長とエネちゃんで買い物行くの楽しみにしてたのに!」
「……おい、話聞けって」
「もう知らない! 行ってくる!」
大きめの荷物片手に、変装した妹が不機嫌な顔で自宅を後にするのを玄関で見送ると俺はリビングに向かいソファーに倒れ込んだ。 顔が火照り、息も荒い……これは完全に熱が上がっている。 熱を図ろうとやっとの思いで置いてある温度計を手に取れば、脇に差し込む。 ピピと一人きりのリビングに電子音が鳴り響いて、表示されたのは39度。 大分高熱だ。 明日までに治ればいいが、それまでどうやって過ごそうか。
「……モモ」
薬飲んだほうがいいのだろうが、あいにくこの家に今風邪薬なるものは存在しなかった。 体温計を元の場所に戻し、部屋へ戻るためにとぼとぼと壁を伝いながら歩く。 しかし次の瞬間目の前が歪んで、意識がぼーっとしてまいシンタローはそのまま廊下で意識を失う。 静かな廊下にはシンタローの苦しそうな息遣いだけが響いていた。
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