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 君と私の隠し事。
 ねぇ、知ってる? 私ね、昔は凄く泣き虫で友達もあまりいなくて独りぼっちでいつも過ごしていたんだよ。
 そんな私を変えてくれたのが君。
 君が私の前に表れてから、全ては始まったの。
 許されない恋、そんなのわかってる。 私と君は、住む世界が違うことも分かってる。

 でも、でもね?
 この感情は誰にも縛ることは出来ないの。

 だから、内緒。 この恋は、誰にも内緒。

「ここなら誰も見てないよ?」
 そう言って私は君を体育倉庫へと連れ出した。 その一番奥、大きな用具の裏で、ひっそりと。
「ねぇ、キスしよ?」
 君の上に私は跨って、キスを強請る。 君は下から私を見上げて、微笑んでくれるんだ。
「積極的だな。」
「だって、何時までたっても進展しないもん。」
 そう私が言えば、君は両手で私を引き寄せてそして私達の唇の距離はゼロになる。
「雨、降ってきちゃったね。」
 アヤノが窓の外を見上げれば、先程までは青空が広がっていたそこには雨雲が広がり大粒の雨を落としていた。
「どうせ夕立だろ。 直ぐやむって。」
 そう君は言って抱きしめる腕を少しだけ強くする。
 簡単な会話も、この触れ合いも大切な二人の時間。
 私達がこうしていられるのは放課後だけだから。 誰にも見られるわけにはいかない、内緒の恋だから。
「じゃあもう少しこうしてようよ。」
「そうだな。」
 そう言って君は、私の手を掴んで押し倒す。 一気に体勢が入れ替わった体育倉庫の奥は、埃っぽい匂いがしたけれど、もうそんなことはどうでもいい。
「シンタロー、もしも私が一緒に逃げてって言ったら、私と何処までも一緒に逃げてくれる?」
 君にはもう親が決めたフィアンセがいる、約束された将来もある。
 こんなどこにでもいる一般的な私とは引けをとらないくらいに恵まれた君を巻き込んだこの恋。
 諦めるなんて選択肢はもうとっくに捨てた。
「当たり前だろ。 お前と何処までも一緒に逃げてやる。」
 そう言って君は私の首元に顔を埋めて、抱きしめてくれる。 手から伝わる温度、こうしてくれる度に私は君に惚れ直すんだ。
「ねぇ、シンタロー。 私ね、非常識な恋をしようって決めたの。 君のためなら私は家族とか何もかもを捨てて君と生きるために逃げることだって厭わない。」
 君さえ居れば、何も要らない。
「俺も、お前のためなら全てを捨ててもいい。 ――でも、今は。」
「そうだね、今だけは。」
 夕焼けが差し込んでいたあの教室から人の温もりが消えた頃。 それが私達二人きりの時間が始まる合図。 全てを捨ててもいい、それほど真剣な恋を君としてる。 でも、でもね。 今だけは、このままで居たいの。

「内緒だよ、愛してる。」




―――――

シンタローはお金持ち、フィアンセ持ち。
アヤノは極々平凡な女子高生っていう設定がありました。
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