メカクシ団がALO入りする話【19】
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 それからシンタローの容態が安定したのは、1週間が経ってからのことだった。 やっと顔を見ることができた、と言っても彼が目覚めたわけではなく未だ眠り続けている彼の痩せこけた頬にアヤノは手を添えて精一杯に微笑む。
「アヤノ……」
 心配そうに和人がアヤノの肩に手をおいて、微笑みかける。
「大丈夫だよ私は……でも、なんで目が覚めないんだろう……もう目が覚めてもいい状態なはずなのに。」
 何がいけないんだろう、どうすれば目を覚ましてくれるのだろう、そればっかり考えている。
「……どうして、なんだろうな。」
 言葉に詰まる。 病室内にいるメカクシ団メンバーだって、最近は元気がなくため息ばかりなのだ。 あんなに笑顔が魅力的だったアヤノも、シンタローの顔を見ながら悲しそうにため息を付く、そんな日々が最近ずっと続いていている。
「シンタロー……」
 和人はシンタローが目覚めない理由がなんなのかを知るためにまず彼の身になって考えてみることにした。
 俺とシンタローの思考回路は似通っているのはSAOで確認済みである。 俺が彼の立場だったら、目が覚めない理由はなんだ?
「……。」
 そして、ふっととある考えに至った。
 此れが確証であることの証は何もないが、自分だったらこう考えるはずだ。  病室内を見回して、和人はひとりひとりの表情を見ていく。
「(ああ、なるほど……)」
 だからお前は目をさますことを拒んでいるのか、なんて心の中でつぶやきながら視線をアヤノに移した。
「アヤノ、少し俺とシンタローを二人きりにして欲しい。」
「……どういうこと?」
 そのアヤノの問に、俺は曖昧な笑みでしか返答を返せずに居た。 しかし、アヤノはそれで色々感じ取ってくれたらしく、静かに頷いて帰り支度を始める。
「みんな、今日は帰ろう?」
「で、でも……」
 渋る皆にアヤノは苦笑を漏らしながら、カバンを持つ。
「和人君がシンタローに話があるんだって。 だから帰ろう?」
「……でも、お兄ちゃんまだ起きていませんよ?」
 首を傾げながら、モモは和人の瞳を真っ直ぐに見つめた。 その瞳にシンタローの面影を重ねながら和人は答える。
「まぁ、そうなんだけどきっと聞こえていると思うんだ。 だから、頼む。」
「分かりました。」
 和人の答えに満足したようにモモもまた帰り支度を始める。 それが、合図になったかのように他の皆も帰り支度を始めた。
「和人君、シンタローのことをお願いね。」
 アヤノはそう言い残して病室を出て行く。 二人っきりになった病室で、俺はベットサイドにあった椅子に腰を掛けた。
「なぁ、シンタロー。 俺の声聞こえているんだろ? 大丈夫だ、此処にはもう俺しか居ない。」
 手をぎゅっと握って、少しでも彼に温もりが伝わればいい。 君はもう独りではないと、気づかせてあげたい。
「だからさ、もう何も怖くないぞ。 俺なら全部受け止めてあげられる。」
 心に語りかけるように、和人はシンタローの手をそっと握って瞳を閉じた。
 それは、どこか神に祈りを捧げているかのような雰囲気を醸し出していて、ピクっとシンタローの瞼が揺れた。
「……シンタロー。」
 ポツリとそうつぶやかれた名前は、静かな病室の中で静かに響き渡り和人はあくびをする。
己の瞼をこするが襲ってくる眠気に負け、シンタローの手を握ったまま彼の寝ているベッドに突っ伏すように眠りの世界へと旅立っていった。
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