メカクシ団がALO入りする話【10】
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 再び降り立ったアルン。 周りに人の姿はなく、私一人だった。
 今でも兄に会うのは怖い。 何を言ったらいいのか分からないし、何を言われるのかが分からないから。
 どうするのかを考えながら、歩いていると後ろから見知った声で呼び止められる。
「リーファちゃん! ……んもー、探したよ!」
 そう、声の主は私の友達であるレコンだ。 レコンはシグルドの件について教えてくれたり、シグルドの部下に捕まったりしていたリアルでも私の友達で、クラスメイトである。 そのレコンが何故アルンに居るかと言えば、すきを見て部下たちを毒殺したり、モンスターを他人になすりつけながら一晩掛けてアルンへと来たのだそうだ。
「アンタそれMPKなんじゃあ……」
「細かいことはいいじゃんこの際。」
 そんなリーファの指摘などどこ吹く風。 レコンはふと周りをキョロキョロとした後リーファに向き直し、疑問を口に出した。
「そういえばリーファちゃん、お兄さんは?」
「あ、ええと……ちょっと喧嘩しちゃって……」
 喧嘩、というよりも私が一方的に言っただけだ。 兄は私の言い過ぎに対して一回だけ怒鳴ったけれど。
「……珍しいね。 仲が良さそうなのに。」
「ごめん、レコンにこんなこと言っても仕方ないよね。 ……帰ろうか。 ルイルベーンに。」
 そうだ、逃げてしまおう。 だって、会ってももう以前のような関係には戻れないのだから。 私は一番言ってはいけないことを兄に対して言ってしまったのだ。 誤っても謝りきれるものではない。
「リーファちゃん!」
「な、何?」
 レコンはリーファの手を握り、顔をじーっと見つめる。 その彼の顔は少し赤くなっており、リーファも釣られて赤くなってしまった。
「リーファちゃんは泣いちゃダメだよ! 笑ってないとリーファちゃんじゃない! ぼ……僕が傍に居るから……リアルでも此処でも絶対に独りにはしないから……ぼ、僕、僕はリーファちゃんが好きだ!」
 そう言いつつ、リーファにキスをしようと迫ってくるレコンをグーで撃沈させつつ思う。
 なんやかんやでこいつにいつも元気づけられていた。
「本当にバカねアンタ……――でも、アンタのそういう所嫌いじゃないよ。」
「え、ホント!?」
 バッと立ち上がりまたリーファの手を取ろうとしたレコンを華麗に避ける。
「調子に乗んな!」
「――私もたまにはアンタを見習ってみるわ。此処でちょっと待ってて。 着いてきたら承知しないわよ。」
 そうレコンに一方的に告げ、私は飛び立った。 マップを確認し、兄のいる場所へと向かう。
「お待たせ。」
「……やあ。」
 お互いに短く挨拶をして、対峙する。 兄の顔は真剣そのものだ。
「スグ……」
 私の名を呼ぶ兄の声、しかし私は兄の言葉を遮る形でしゃべりだした。
「お兄ちゃん、試合しよう? あの日の続き。」
 そう言いながら私は武器に手を掛ける。 なにか言いたげに開かれた兄の唇は、次の瞬間には閉じられていた。
 頷かれた兄の瞳の輝きに暫し見入っていると、兄は口を開く。
「いいよ。 今度はハンデ無しだな。」
 そう言いながら兄は背中の剣を引き抜くと構える。 其の姿は前、試合した時の兄の構えに重なる。
「寸止めじゃなくていいからね。 ――行くよ。」
 其の言葉を合図にしたように、キリトとリーファは同時に地面を蹴った。

一方、メカクシ団メンバーは桐ケ谷兄妹の件が落ち着くまでアルンを回ることになった。 その過程で、アヤノは何かに気づいたように、立ち止まって皆を呼び止める。
「どうしたの?」
 代表してエネがアヤノに問いかける。
「ねぇ、これからグランド・クエストに行くわけだけどさ、能力は極力ナシの方向でお願い。」
 この世界でも皆の目の能力がNPCに対し有効であることはもう確認済みである。 この能力を使用したらグランド・クエストのクリアも多少は楽になるであろう。 しかし、アヤノはそれについては反対だ。
「どうして? 能力使ったほうが楽になるんじゃ……」
 その疑問を口にしたのはマリーである。 彼女の能力がきっと一番役に立つであろう。
「このゲームのマスターは、法律に違反することをやっているけど僕達は一般プレイヤー。 一般から逸脱した事をして勝っても嬉しくない……ってことでしょう?」
 アヤノの意図を察したように、コノハが口に出す。
「そう、だからこそ能力は最後の手段にしよう?」
 その言葉に皆は微笑んで頷いた。 そのことに安心したアヤノは、空を見上げる。 見えるのは世界樹の木々だけだが、きっとこの上に私の愛しい人が居ると確信があった。
「そういうことなら、分かったよ。 能力は使わないようにする。」
 アヤノの問に最初に答えたのはカノである。 そのカノの言葉に続けてキドやセト、マリー・モモが頷いて答えた。
「じゃあそろそろ行こうか。」
 キリッとした表情で、アヤノはキリトとリーファが待っているであろうグランド・クエストへ向かう門の前へと足を踏み出した。
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