メカクシ団がALO入りする話【06】
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 その後、アルンへと向かう最中ちょっとした地下世界――ヨツンヘイムに迷い込み皆で命からがら抜けだした所為もあり初心者である彼らのスキルレベルは格段に上がった。
 ちなみにだが、キドの曲刀スキルが上昇し、スキルスロットに日本刀が追加されていたのは余談である。
「いやあ、色々あったけどやっと着いたな……アルンに……」
 ヨツンヘイムをやっとの思いで抜けだした時はもう辺りは夜を通り越して朝になっており、リーファは人知れずに顔を強ばらせていた。
「でも、まさか生きて出られるなんて思ってなかったなぁ。」
 そうコノハが言うとメカクシ団メンバーはそれに同意するかの如く頷く。
「にしてもあれが世界樹か……思った以上に大きいんだな。」
 キドが世界樹を見上げながら感心した様子で呟く。
「とりあえず、宿屋を探しましょうよ。 もうすぐメンテナンスでしょう?」
 はっとした様子でヒヨリは呟いた。
「そういえばメンテって何時まで?」
 キリトのその問いに答えたのはリーファである。
「えっと確か今日の午後3時までだよ。」
「そうか……」
 世界樹を見上げ、キリトは口元だけで彼女の名を呟く。 アヤノもまた上を見上げ、拳を握っていた。 それを目の当たりにしたリーファは、改めて彼らがこの世界にきた理由を思い出す。
 SAOから復帰しない大切な人を救う為――そう確信した瞬間リーファは言いようのない疎外感をキリトに対して感じてしまった。
 その思考はぶんぶんと頭をふる事によって飛ばす。
「ユイ、ここらへんで安い宿はあるか?」
 キリトの言葉にユイは笑顔で答える。
「はい! あっちを降りたところに安いところがあるみたいです!」
 ユイのその言葉にキリトはすたすたと歩いて行く。 慌ててリーファ達はその後を追いかけ、走りだした。
 リーファはちらりと上を見上げ、世界樹に目を凝らしてみる。
 しかし、巨大な樹木の上の方を凝視しても葉っぱしか見つけることは出来なかった。




 暗い、くらい、闇の中。
 ジャラ……と音を鳴らすは鎖、ここは陽の光が一切入らない独房のような場所。
 閉じ込められた当初こそ、反抗していた彼だが1ヶ月を過ぎる頃になると言葉も発さずに、虚ろな目で地面を睨むだけとなっていた。
 人間は暗い場所に長時間閉じ込められると精神的におかしくなるとは聴いていたがやはり本当だったのだろう。
 この彼の様子を見る限りだと。
 これほどまで面白い経過観察は無いだろうと須郷はニヤリと笑った。 今の彼は作った音声すら判別できないほどに精神的に疲弊している。
 その証拠に、彼の最愛の相手であるあの子の声を編集して作った拒絶の言葉を聞いて疑うこともなく彼女の気持ちだと受け取ってしまった。
 恐らく閉じ込められた当初の彼だったら編集の痕に気づいたのだろう。
「実験を次の段階へと進める。 準備をしろ。」
 近くにいるナメクジアバターに向かってそう言うと、須郷は暗い独房のような場所へと足を踏み入れた。
 ぼーっと床を見つめる彼の顎に手を添え強制的に上を向かせる。
「皮肉だねぇ。 君が最後の最後まで信じていた彼女が、今は君を苦しめるものとなっているだなんて。」
 最も、そう差し向けたのは自分なのだけれど。
 部下が持ってきた代物を手に須郷は準備に取り掛かった。
 茅場晶彦の研究を元に独自に創りだしたこの機械は、2つの赤い宝石によって装着者の心を惑わし、彫り込ませる物だ。
 主の命令には絶対逆らわず、どんな命令も実行する――まるで下僕《Fante》のようではないか。
 これを使えば最高の余興を催すことが出来るだろう。
「さあ、早くおいでよ。 キリト君。」
 愛しいお姫様と、愛しい相棒を助けに彼はきっとこの世界樹の上へとやってくるだろう。
 その時に、きっとこの最高の余興が楽しめる。
 ピピ、と音を立てて部下から連絡が来たのはその時であった。
「どうした。」
 そう感情の灯らない声で返事を返す。
 どうやら愛しい姫君があの鳥籠から逃げ出したのだそうだ。 やはり彼女はこうだから美しい。
「直ぐに鳥籠へと連れ戻せ。 ドアのパス変更と、24時間の監視をしておけ。」
 それだけを部下に告げ、須郷は再びニヤリと笑った。
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