高校生組がSAO入りする話【20】
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 それからキリトとアスナから連絡が来たのは1日経ってからで、手伝ってほしいことがあるから1層に来てくれないかという趣旨のメッセージが朝アヤノとシンタローの元へと届いた事から全ては始まった。
 顔を見合わせ、頷いて準備を整える。
「行こう、アヤノ。」
「うん。」
 第一層へと足を運べば転移門広場に彼奴等はいた。 そして、その二人の間には笑顔のユイと、其の後ろには見慣れない女性。 服からして、軍の人だろうか。
「どうしたんだ?」
「いや、あのな……」
 ユリエールという名の女性は、軍の現リーダーである《シンカー》の副官なのだそうだ。 しかし、今実質的に権力を握っているのは副リーダーである《キバオウ》という男らしい。
 シンカーは元々、情報や資源を平等に皆に分け与えるために軍を作ったのだが、強大化していく内に制御ができなくなり、内部での権力争いが勃発してしまったのだ。
 キリトとアスナは昨日軍の中でも悪いことばかりを繰り返す一派に遭遇し撃退して、そしてその強さを知ったユリエールがとある頼み事のために縋る想いでやってきたのだとか。
「んで、お願いってなんなんだ?」
 シンタローの問に、ユリエールは俯きがちに話しだした。
 なんでもこの1層の地下に巨大なダンジョンがあり、シンカーはキバオウの企みにより、丸腰で何も持っていないまま置き去りにされ帰れなくなっているらしい。
 なんでそんなことになったのか、と問えば。
 この間の74層で出会ったあの軍の大佐コーバッツを派遣し力を示そうとするも失敗、それを問われシンカーに丸腰で話をしないかという分かりやすい罠に引っかかり、今の状況になったらしい。
 どこまで優しい人なんだろうか。
「全ては副官である私の責任です……」
「後悔は後からするから後悔なんだよ。 そんなもんする前に、さっさと行くぞ。 助けるもん助けてから悔いればいい。」
「は、はい……」
 シンタローの言葉に、ユリエールは頷く。
「じゃあ、行こう。」
 フードを深くかぶり、シンタローは皆に告げる。
「……なぁ、なんでフード被るんだ?」
「ん? まぁ、色々あんだよ。」
「なんだそれ……」
 なんとなくだが、まだユニークスキルのことは他言したくなかった。
何より、あのヒースクリフにも余り他言しないでほしいと言われてしまったから、黙っているしか無い。 きっとこのダンジョンで、使う機会が来るはずだから。
「ほら、行くぞキリト。」
「お、おう……」
 納得していない事を悟られないように彼の背中をじっと見つめる。
 何かを隠している――今のシンタローは俺に何かを。
 そう確信したのは先程のシンタローの言葉だ。 これは最近気づいたことだが、シンタローは嘘をつく時、瞳を逸らす癖がある。 さっきのフードの件だって、俺から目を逸らしていたように見えた。
「なんでだよ、なんで何も言ってくれないんだよ……」
 悔しい、素直にそう感じる。 だってシンタローは俺の隠し事にはすぐに気づいて、隠している内容まで推測してそれが当たっていたんだ。
 なのに、俺はアイツが何を隠しているのか分からない。
 人知れずに拳を握り、キリトはシンタローの痕を追いかけていった。
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