高校生組がSAO入りする話【16】
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 アヤノの元へと戻る途中、ふとキリトの位置をマップでモニターしたシンタローはとある事実に気づく。
 一緒に行っているはずのコドフリーの反応がなかった。
「……チッ」
 盛大に舌打ちをしながらシンタローは全速力でキリトの居る55層の迷宮区を目指した。
 何分ぐらい走っただろうか、いつの間にかアスナ・アヤノと合流した俺は3人でキリトの元へと全速力で向かう。
 目を凝らせば、ちょうどクラディールにキリトが刺されている最中のようだ。 彼のHPはみるみる減っていく。 もう、時間がない。
「……アスナ、やれっ」
「うん!」
 頷くより早く、走りながら細剣を構えたアスナはクラディールに向けて全力で突っ込んでいった。 それを確認したシンタローはアヤノの顔を見つめ、頷きながらキリトの手前でブレーキを掛ける。
「キリト大丈夫か!?」
彼のHPはもう一コンマしか無い。 早く回復してあげないと。
「ヒール!」
俺は結晶片手にそう叫んだ。 すると、キリトのHPはみるみるうちに安全ゾーンへと回復し、苦痛に満ちた彼の顔も和らいでいく。
 アヤノの心配そうな顔に、キリトは頷いて微笑み返す。
「間に合った……間に合ったよ神様……」
 酷く安心したような彼女の顔、先程まで必至に叫んでいた名前。
「生きてる……生きてるよね?」
「ああ、生きてるよ……」
 そのキリトの言葉に酷く安心したアスナは途端に表情を変え、怒りに満ちたような顔でクラディールを睨みつけた。
「待っててね……直ぐに、終わらせるから。 シンタローさん、アヤノ、キリトくんをお願い。」
「……ああ。」
「任せて。」
 止めても無駄だと、シンタローは悟った。 既に相手の色はオレンジ担っているため、アスナがクラディールを攻撃したとしても犯罪フラグが立つことはない。
「あ、アスナ様……どうして此処に…… い、いや……これは訓練で……事故が……」
 そう見苦しい言い訳をするクラディールの言葉は最後まで紡がれることはなく、アスナの閃光の一撃がクラディールの体を攻撃していく。
 情けない悲鳴をあげるクラディールの声を聞きながら俺は解毒結晶をキリトに使う。
「……まったく、気をつけろっつったろ。」
「悪い……」
 手を貸してキリトを起こすシンタロー、視界の橋ではアスナの怒涛の一撃が未だに繰り出されている。
「わ、分かった! 分かった! 俺が悪かったよ! ギルドはもう辞める! あんたらの前にも二度と姿を表さねぇ!」
 そう言って地面に這いつくばるクラディールを冷めた目で見下ろすアスナは、細剣を振りかざす。」
「し、死にたくねぇ!」
 その叫びにアスナの細剣の動きが躊躇したように止まる。 クラディールは其の隙を見逃さない。
「きゃ!」
 短い悲鳴を漏らし、クラディールに細剣を吹き飛ばされたアスナは目の前まで迫った相手の剣に目を見開く。 とっさに助けに行こうとするも、先を越されてしまう。 やはり、キリトの反応速度には叶わないようだ。
 キリトはとっさに利き手とは違う手を盾にし、攻撃を防いだ。 其のせいで片手はポリゴンとなって消えていったがあのくらいならば死ぬことはないだろう。 隙かさずキリトは体術スキルを発動して、クラディール目掛けて手を突き立てる。
「この、人殺し野郎が……」
 俺はそうキリトに呟いたクラディールのセリフをしっかりと聞き取っていた。 其のセリフに、また彼に傷を追わせてしまったと手を握りしめるしか出来ない。
「ごめんね、私の……せいだね……」
 涙を流しながらキリトに謝るアスナ、俺はアヤノと寄り添いながら静かにその場を見守る。
「…わ、私もう…キリトくんには…会わな…」
 アスナがもう会わないと言い終わる前に、その言葉は途切れてしまった。 理由は、キリトがアスナの唇を奪ったからだ。
 唇を離したキリトは俺達がいることなど忘れたかのように、アスナにプロポーズとも取れる言葉を発した。
「アスナ、俺の命は君のものだ。 だから君のために使う。 最後の一瞬まで一緒にいよう。」
「……私も。 私も絶対に君を護る。 これから永遠に護り続けるから。 ……だから。」
 そういって、キリトとアスナは静かに抱き合った。
「……コホン。」
 分かりやすく咳をして、自分たちも居ることを彼らに知らせればぶわっと顔を赤くしてキリトとアスナはうつむく。
「帰ろうぜ。」
「そうだね、帰ろう。」
「ああ。」
「ええ。」
 一拍置いて笑いあい、4人は立ち上がった。
 
 あの後、キリトとアスナは、今日は二人きりで過ごすとラブラブな雰囲気で《血盟騎士団》の本部を出て行った。 俺はそれを見送りながら、アヤノと手をつなぐ。
「アヤノ、俺達も帰るか。」
「そうだね!」
 こうして街をアヤノと二人で歩くのも随分久しぶりな気がする。
「今日は何が食べたい?」
「うーん、何がいいかなぁ。」
 はたから見れば爆発しろなんて言われている行為を堂々と魅せつけるようにやっている辺り俺は性格が悪いなと笑う。
「どうしたの?」
「いや、なんでもねぇよ。」
 そんなどうでもいい考えを吹き飛ばすように俺はアヤノの手をにぎった。
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