高校生組がSAO入りする話【13】
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 次の日、キリトは《二刀流》の件で情報屋にしつこく迫られ、ねぐらに居たにもかかわらず結晶を使って転移し、そしてエギルの元へと逃げてきた。
「軍の大部隊を全滅させた青い悪魔、それを単独撃破した二刀流使いの50連撃……こりゃ大きく出たなぁ。」
「尾ひれが付くにも程がある……俺一人で倒したんじゃないのに……」
 酷く疲れた様子でキリトはため息を吐いた。
「そりゃアンタの自業自得なんじゃないの? ……秘密だーって言ってたのをばらしちゃったんだから。」
 ニヤリ、とリズがあざ笑った。
 ああ、わかっている。 こうなることは覚悟していたし、あそこで《二刀流》を使わなかったらもっと被害が出たに違いないのだ。
「はぁ……どっかの田舎に隠居でもするか……」
 そんな他愛のない話をしていた頃、エギルのお店に駆け込んできたのはアスナだ。 昨日、アスナは涙ながらにギルドを休むとキリトに告げて、今日ギルド本部まで言っていたはずなのだが。
「どうしよう……大変なことになっちゃったよ……」
 息を乱しながらアスナが告げたのは、俄には信じられない話だ。
 アスナの所属するギルド《血盟騎士団》のリーダー《ヒースクリフ》は彼女の一時退団には条件があると言ってきたそうだ。
「は? 俺と立ち会う?」
「うん……」
 何がどうなっているのやら、ヒースクリフは立ち会いたい……つまり、デュエルしたいと言ってきたのだそうで。
「なんでそんなことになったんだよ……」
「私にも解かんない……」
「とりあえず、グランザムまで行くよ。 俺が直談判してみる。」
「ごめんね……」
 酷く申し訳なさそうにアスナはキリトに謝る。 それに微笑みで答えキリトはエギルとリズに別れを告げてグランザムに向かった。

 久しぶりにアヤノと過ごす二人きりの休日に、舞い込んできた情報は驚くばかりのもので。
 俺達に其の情報をもたらしたのはエギルで、先程までキリトと一緒に居たらしい彼に導かれ、やって来たのは先日新たに解放された75層の《コリニア》だった。
「……なんでそんなことになってるんだよ。」
「知らねぇよ……」
 直談判すると向かっていったキリトとアスナだが、何故か其の話し合いはデュエルしようという形で決着を付けたらしく、この層でこれから彼らのデュエルが行われるらしい。
 既にお祭り騒ぎとなっているこの75層の主街区はローマ風の作りだ。 新たに開放された層だけあって、攻略プレイヤー意外の観光目的なプレイヤーも多く、それに加え、《SAO最強の男》と言われている《ヒースクリフ》と、《二刀流使い》と言われている《キリト》のデュエルという一大イベントが行われるだけあってごった返していた。
 一時、アヤノと別れキリトが居ると言われた控室に向かったシンタローは、暗い通路を歩いていた。
「おい。」
 不機嫌そうな声でキリトに話しかければ、彼はギクッと分かりやすく反応を示し、ぎこちない動作でこちらを振り向いた。
「この状況を10文字以内で説明しろ。」
「い、いや……あの……売り言葉に買い言葉で……」
「ほう…俺がそれで納得するとでも?」
「すいません。」
 俺の不機嫌そうな態度に耐えられなかったのかキリトは土下座する勢いで謝罪した。 隣に立つアスナに事の発端を聞き、更に不機嫌になった俺に対し、彼はどんどん委縮していくようだ。
「まぁ、こうなったら全力で勝ちに行けよ。 負けたらペナルティな。」
「は、はぁ!?」
 キリトは俺の言葉に言い返そうとした。 しかし。
「何か文句でも?」
「いや、ありません。」
 其の言葉は、シンタローの絶対零度の微笑みによって飲み込まざるを得なくなった。
「じゃあ俺はアスナとアヤノと上で見てるから。」
「頑張ってねキリト君。」
 軽く手をふり、アヤノとエギルに合流するべく薄暗い廊下を歩いていたシンタローはふと何かに気づいた。
「アスナ、悪い先に上に行っててくれ。」
「シンタローさん?」
「直ぐ後を追いかけるから。」
 無理にそう言いくるめ、アスナを先に行かせたシンタローは振り向いて暗闇に向かって話しかけた。
「……俺に何のようだ。」
「ほう、私に気づくとはたいしたものだな。 さすが天才と呼ばれているだけある。」
「……俺とお前は初対面のはずだ。 何故それを知っている。」
「さぁ、なんでだろうね。」
 この全てを知っているかのようなこの口調がシンタローには気になって仕方がない。
「……何故キリトと勝負したがるんだ。 お前と一緒でユニークスキル持ちだからか?」
「アスナ君は我がギルドの基調な戦力だからね。 引きぬかれたらこちらも困るのだよ。」
「だったら護衛の人選に気をつけろよ。」
 その俺の言葉にヒースクリフはふ、と笑う。
「……何がおかしい。」
「いや、キリト君と同じことを君がいうからついな。 ……さて、もうデュエルの時間だ私はこれで失礼するよ。」
 それだけ告げるとヒースクリフは身を翻す。
「……君とは一度じっくりと話したいものだ。」
「……」
 その言葉の意味を暫く考えたシンタローは、外から聞こえる完成にハッとして慌ててヒースクリフとは別の方向へと走りだした。
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