高校生組がSAO入りする話【06】
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 再びキリトとシンタローがエギルのお店に帰ってくれば、其処に居たのは変わらないメンツだった。 誰も帰ること無く、自分たちの帰りを待っていてくれたらしい。
「キリト君!」
 顔を見るなり、安堵したようにアスナがキリトの名前を呼ぶ。 アヤノもまたそれと同じようなタイミングでシンタローの名前を呼び抱きついて、1言。
「おかえり。」
「た、だいま……」
 抱きつかれながらそう言われたことに照れたのか顔を真赤にしながらシンタローは答える。 少し間を開け、事態を説明するべく二人は席につき口を開いた。
「いやあ、驚いたよ。」
 口を開くや否や、キリトは驚きを口にした。 というのも、事の顛末はとても衝撃的なものだったかで。
「どういうこと?」
「最初こそシンタローはビビりまくりの怯えまくりで、俺の後ろに引っ付いていたんだけどさ……」
 別に驚くようなことでもないことをキリトは口にしたが、本題はここからだとニヤケ顔で制される。
「いきなりシンタローが割り込んできて、フードを脱いたんだ。
 顔を見るなり二人な悪役面を見せたけど、そんなのは最初の方だけでさ…… まぁ、言い合いでも戦いでも負ける気がしなかったんだけど、相手があまりにも汚い言葉を吐くからシンタローがブチ切れてさ。
 後は、言葉責めでかな〜りあの二人を怯えさせた上に、俺が持っていた回廊結晶を奪い取って粗側鎖と監獄エリアにつないだ後、すげぇ冷たい眼差しで”入れよ”って呟いてそれで終わり。」
「えっ?」
 あの迫力と言ったら、とキリトはシンタローを見つめる。
 当の本人はといえば、恥ずかしかったのか顔を赤くしながらフードを深くかぶっていた。 その仕草はとても可愛らしいもので、キリトの言っていたシンタローさんとは結びつかない。
「……それ本当なの?」
 信じられなかったのか、アスナは未だにフードを深く被るシンタローとキリトを交互に見ながら呟く。
「本当も本当さ。 シンタローにSっ気があったとはな……」
「き、キリトっ……お、俺はそんなんじゃ……」
 顔を真赤にしながら言うシンタローを見れば、先程言った言葉が更に信じられなくなってしまう。
「あはは、シンタローはスイッチが入るとすごいよねいつも。」
 アヤノはなれた様子で笑い、シンタローの隣に行きシンタローを慰めるように頭を撫でる。 それはまるで母と息子のようで、キリトは微笑む。
「あの様子じゃ俺は行かなくても良かったよなーシンタロー。」
「い、いや、あの……一人だったらたぶん無理だった……とおもう。 怖かったのは本当だし……あっ、あの、お礼と言ったら何だけど、料理作る……から。」
「りょ、料理!? シンタロー、料理するのか?」
 料理と聴いた瞬間のキリトの素早さは、閃光のアスナと引けをとらないレベルである。 アスナはそんなキリトに溜息を吐きながら吹き出す。
「まったくキリト君ったら……でも、私もちょっと驚きだなぁ。 シンタローさんは料理するの?」
「あ、えっと……現実でも料理は結構好きで……よく作っていたから……」
「へぇ…驚いたなぁ。」
 キリトが目を輝かせながらシンタローに感心した様子で呟いた。 その瞳は完全に歳相応の男の子そのものであり、アスナはそんな仕草にかわいいとか思いながらシンタローに再び目を移す。
「じゃ、じゃあその……今日助けてくれたお礼と、探しに来てくれたお礼に皆の分……今から作る……から……」
「えっ、俺達にもか?」
 嬉しさ混じりの声でクラインは驚きの声を上げる。 シンタローはそれに頷き、微笑みかける。
「あ、あの、エギル……キッチン借りていいか?」
「構わねぇが……そんなたいした道具とか揃ってねーぞ?」
「道具なら大丈夫。 俺の借りている所がこの近くにあるし、無かったら取りに行くから。」
 そう言うと、シンタローは立ち上がりキッチンの方向へ歩いて行く。 するとアスナははっとして立ち上がる。
「あ、シンタローさん私も手伝うわ。」
「え、あ……でも……」
「人数も多いし、私、料理得意だから大丈夫よ。 あ、アヤノはどうする?」
「うーん、私料理スキルあげてないし現実でも得意じゃないからやめておくよ……」
 アヤノはシンタローと違い、あまり器用じゃない。 料理もしたことがないに等しいため、出しゃばっていってもきっと迷惑になるだけだろうから。
「そっか。 じゃあ皆ちょっと出かけてきてくれない? その間に料理つくって配膳しておくわ。」
「お、おう。 じゃあよろしくな、シンタロー・アスナ。」
 そう言い残し、皆は出かけていった。 シーンとした部屋の中でアスナは張り切った様子でシンタローに微笑みかける。
「さて、シンタローさん頑張りましょう!」
「おう!」
 シンタローは張り切った様子でキッチンへと入っていった。
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