強い意思が、彼の瞳に灯っている気がした。 口から出てくる言葉こそ、オドオドしていたが彼の決意はきっと本物で、決して偽物じゃない。
「お、俺も一緒に行く……から、だから……その。」
そんなシンタローを見て吹き出しながらキリトは了承した。
「分かった。」
「あ……ありがとう。」
其の二人の会話に割って入るように、アヤノは立ち上がって。
「じゃ、じゃあ私も――」
「いや、アヤノは……その、此処にいてくれ。」
シンタローは真剣な眼差しで、アヤノを説得する。
理由なら極々簡単なもので、ラフコフと繋がりのある危ないプレイヤーとアヤノを接触させたくないのだ。 アヤノが弱いと言っているわけではなくて、ただ単に自分の気持ち的な問題で。
もしもアヤノが目の前で斬られたりなんかしたら俺は耐えられないから。
「じゃあ、その前に!」
部屋全体に響き渡るような声でアヤノは高らかにシンタローに向かって宣言する。
「シンタロー! 私と結婚して!」
「…………え?」
その部屋の中に居た者全てがシンタローと同じような反応をしていた。 ただ、シンタローだけは顔を真赤にして照れている。
「私と結婚するの……嫌?」
「えっ、嫌なわけ……無いけど! その、いきなりで……吃驚したというか……」
其の言葉で部屋の中にいた連中はニヤニヤしだしたり、事の顛末を見守っていたり。
様々な反応の中で、密かにアスナは友達であるアヤノの勇気と元気が羨ましく思えた。
この部屋にいるキリトに片思いをしている私は肝心な所で臆病で、未だに踏み込めずにいるから。
「ごめんね……でも、シンタローに会えたら真っ先に言おうって決めていたの。 ……どう?」
「わ、分かった……」
そのシンタローの返事を聴いた瞬間、部屋はざわつきエネやコノハ、アスナは揃っておめでとうと祝福している。
小一時間ほどすればシンタローとアヤノの手にはシルバーのリングが光っていた。 それはこの二人が結婚している証である結婚指輪だ
「おお……指輪……が、」
自分の手を見ながら心なしかキラキラしているシンタローに微笑ましく思いながら、キリトは先ほど彼から貰った回廊結晶をしまう。
この手の依頼は何件かこなしているし、自分ならば平気だろう。 しかし、シンタロー自身がついてくるというのは些か心配なところがある。 だって、その二人に震えるほど怖い思いをさせられたのに。
「シンタロー、本当に大丈夫なのか? だって、震えるほどこわい相手なんだろ?」
「怖い……けど、いつまでも逃げているわけにも行かないから…… だから、俺も行く。 ――それに、ひとりじゃないから。」
「分かった。 ……そいつらの居場所、宛あるか?」
「……あぁ。」
あの二人が根城にしているのは、22層だ。 あそこはモンスターが出ないし人も少ないから隠れるには打って付けの場所。 俺と一緒に居た頃、あの二人は22層をメインに活動していた。 今でも変わっては居ないだろう。 あの二人は偉く22層が気に入っていたから。
「なるほどな……22層か……じゃあ今から行くか。」
「あぁ。」
不安そうに室内にいる全員が見ている中で互いに頷き合い、全員に大丈夫だと告げた後エギルのお店を後にした。
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