高校生組がSAO入りする話【03】
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「えっ、キリト君それって……」
 アヤノの言葉を代弁するようにアスナが呟いた。 キリトは其の言葉に静かに答える。
「ラフコフが最前線の迷宮区に出没するようになったのはあの層が開放されてから直ぐだし、シンタローだっけ?そのプレイヤーはエギルの話を聞く限りだと迷宮区に潜り続けているんだろ? まぁ、其のくらいしか確証はないし、俺の推測にすぎない。 だけど、急ぐ理由にはなる。」
「そうだな。 じゃあ今から言ってみるか? だから集まったんだろ?」
 クラインがキリトの言葉を聞いて場を明るくしようと明るめの声で呟いた。 其の言葉に部屋に居たメンバーは皆頷き、準備を始める。
 そして、一行は最前線の転移門広場へと足を踏み入れていた。 いつもとは違う雰囲気にキリトはいち早く気付いて、近くに居たプレイヤーを適当に捕まえて話を聞けば、今迷宮区でラフコフが見かけられたそうで、其のプレイヤーは恐ろしくて攻略を切り上げてきたのだそうだ。
「慎重にいこうぜ。」
 話を聴いていよいよ危ないことを理解した一行は気持ちを切り替え、迷宮区へと向かっていく。
 いつも以上に静かな迷宮区は不気味な雰囲気であり、モンスターの叫び声すら恐怖を掻き立てるようで密かに息を呑む。
「エギル、まだか?」
「……。」
「エギル?」
「シンタローの周りに3人位プレイヤーが居るんだが、これは……戦闘中、か?」
 其のエギルの言葉は不安を掻き立てるのに十分すぎて、キリトは一番に危険性に気づき駆け出す。
 それに続くようにアスナとアヤノは青ざめそして武器を持ちながらキリトの後を追いかけて、エギルはアヤノの名前を叫びながら彼らの後を追いかけていく。 嫌な予感はあたってしまっていた。
 キリトが全速力で駆けていった先に広がっていた光景はラフコフメンバー3人に囲まれる黒いフードをかぶった一人のプレイヤー。
 どんなに強くても3対1じゃ分が悪い。 その為其のプレイヤーは苦戦している様子だった。
 とっさにキリトは持っていた剣を握りしめて黒いフードをかぶっているプレイヤー、恐らくシンタローという名前である彼の加勢をするべく走りだした。
 剣の音があたりに響いて、そして―黒いフードを被った男が目を見開いた。
「大丈夫か?」
 1言だけ、キリトは男に向かって呟けばあっけにとられながらも頷いた。 それを確認して、キリトはラフコフへと視線を移し、殺気を込めた眼差しでラフコフのメンバーを睨みつける。
「3対1とは、フェアじゃないな。」
 そう呟けばラフコフメンバーは、チッと分かりやすく舌打ちをした。
「何故、コイツを狙う?」
 鋭い声でキリトはそう問いかけて、そうしてリーダー格なのであろう男が包丁を片手に得意気に話したのは、ラフコフが3人がかりでこの男を狙っていた理由だ。
 この男を殺してくれと、とあるプレイヤーに高額な報酬で頼まれたのだと。 其のつぶやきで、俺はいつぞやの圏内事件を思い出した。 あの事件も同じ様な物だったからだ。
 当の本人である男は、其の言葉を聞いて驚くこともしなければ落胆することもなかったように見えた。 見えた、というのはそのまんまの意味でありキリトから見てこの男は無表情すぎるのだ。 感情の変化が読み取りにくい。
「もうじき此処に援軍が駆けつける。 攻略組を30人相手にしてみるか?」
 あの時と同じような言葉で牽制をかける。 勿論30人なんて大嘘だが強ち間違いではないだろう。
 ラフコフのリーダー格なのであろう男は指をパチンと鳴らし、斧を仕舞いながら転移結晶を取り出してワープしていった。 後を追うように残ったラフコフのメンバーも転移し終われば、すべてが終わったという空気感が辺りに流れる。
 ふう、と溜息を吐きながら愛用の剣を鞘へと収めそして。
「――アンタ、シンタローか?」
 後ろにいる俺よりも背が高い黒いフードの彼を見つめて呟く。
「あぁ。」
「そうか。 無事でよかったよ。」
「なんで、俺のこと……」
「アヤノ――」
 キリトが其の名前を出した瞬間、分かりやすく反応したシンタローはキリトの後ろをみて固まる。 それは全速力でかけてくるアヤノの姿と、そして、先輩二人の姿が見えたからだ。
 なんで、どうして。
 そんな疑問はエギルを見た瞬間に把握した。
「其の様子じゃ、俺達の探しているシンタローに違いないみたいだな。 ……俺はキリト、ソロだ。」
 随分と遅くなってしまった自己紹介を一方的に済ませ、そして視線を後ろに向ける。 やっと追いついたアヤノ達に事の経緯を説明すれば、安心したのか涙で頬を濡らしながらアヤノはシンタローに飛びついて抱きついて。
 生きていてよかったと、ひたすら呟き続けた。
「なんで、なんで……一人で行っちゃったの……なんで、私を連れて行ってくれなかったの……ねぇ、シンタロー!」
 苦い記憶が呼び覚まされた気がした。

 ――始まりの日の、あの。
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