審神者如月伸太郎の話【02】
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 次の日、新しく顕現した大和守安定、そして今剣を加えて出陣を再度行った。 戦場へはついていけない主である如月伸太郎を残し、山姥切国広は初回出陣時に負けを期した場所へと再びやってきた。
 その結果はなんと快勝。 改めて山姥切国広は、刀数は大切なんだなと内心想ったという。 戦闘後、時間遡行軍が落とした一振の短刀を手に、山姥切国広は本丸へと帰るべく、後ろに居る今剣と大和守安定の方を向いた。
「よし、じゃあ帰るか。本丸に。」
「そうですね!」
「主に報告だねー」
 おかしなものだ。 この3振りは、顔なじみだったわけでもないそれどころか生まれた時代すらも違う刀だというのに、こうして自然に笑いえるのだから。
 そう想いながら本丸に帰れば、微笑みを浮かべた主が居た。
「おかえり、怪我はあるか?」
「いや、3振りとも無傷だ。多少刀装が傷ついたが……」
「よし、無事で良かった。 まずは出陣おつかれさん。」
 そういって安心したように笑う主に、山姥切国広は笑う。
「ああ。 ただいま、主。 これ、戦場で拾った刀だ。」
 そういって主に一振の短刀を手渡した。 それをみた今剣と大和守安定が主の顔を見て笑う。
「ただいまかえりました!」
「ただいまー主」
「おう、おかえり今剣・安定」
 抱きついてきた今剣の頭をなでて、安定とハイタッチしつつ手に持った短刀を握って山姥切国広に目を向けた。
「国広、顕現させるからお供を頼む。」
「ああ。今行く。」
「ぼくもいきます!」
「なら僕も!」
「結局こうなるのか……」
 まだ刀剣男士の数も少ない為、気になるのだろう。
「狭いから部屋に入るのは国広だけだ。 ほか2振は入り口から中覗いてる感じで。」
「わかりました!」
「了解」
 言われたとおり今剣と安定は入り口外からなかを除き始める。 それをみて、俺は短刀の顕現作業に入った。 力を込めて、そうして俺は名前を呼ぶ。
「――薬研藤四郎。」
 そう名を呼べば、答えるかのように桜の花びらが舞いその中から勇ましい声が聞こえる。 しかし立っていたのは声の主とは思えないほど儚げな美少年だった。
「よお大将。俺っち、薬研藤四郎だ。兄弟ともども、よろしく頼むぜ」
「はじめまして、薬研藤四郎。 俺はここの主の如月伸太郎だ。 よろしくな、薬研。」
「お、この本丸はまだ俺の兄弟が顕現してないのか。 ってことは俺っちが最初の粟田口ってことだな。」
「ああ、そうなんだ。 寂しいだろうが、少しの間だと想うから待っていてくれ。 それに、薬研独りじゃないしな。」
 そう言うと、主の横に控えていた山姥切国広が右手を差し出す。 薬研はその手を戸惑いもなく握って笑う。
「俺は此処の本丸の最初の刀山姥切国広だ。」
「山姥切国広……じゃあ山姥切だな。 よろしく。」
 そういって薬研は人の良さそうな顔をした。 見た目に反して随分頼りがいのある性格の子らしい。
 入り口から覗く2振が負けじと手を降って声を上げた。
「ぼくは今剣! よしつねこうのまもりがたななんですよ!」
「大和守安定。 新選組の沖田くんの愛刀だよ。」
 入り口で思いっきりアピールする2振に近づいて薬研はよろしくな、と笑う。
「さて、薬研もきたことだしそろそろ内番も入れていかないとな。とりあえずは、戦帰りなんだおやつ作るから薬研も一緒に食べようぜ。」
「あるじさま、おやつはなんですか?」
「おやつはな、ホットケーキっていうやつだ。 俺好きなんだよな。」
「ほっとけーき?」
 今剣を筆頭に、みんなが聞き慣れない名前に首を傾げた。 そりゃそうだろうと内心思いつつ口を開く。
「美味しいぞ。食卓に用意はしてきたからいくぞー!」
「おー!」
 今剣が歩いていく主の後ろをついていく。 山姥切国広はふっとわらって、それに続いて大和守安定は、薬研に笑いかけた。
「いこうか、薬研。」
「おう、なんだかよくわからねぇが楽しそうだ。」
「これからきっと楽しいよ!」
 そういった安定は薬研とともに本丸の廊下をあるいていった。

 ――その翌日のこと。
「これから鍛刀祭りをしようと思います。」
 主がいきなり全員を集めて仁王立ちしつつ言う。
「……とりあえず、太刀がほしい。 何回か鍛刀して大きい刀を増やしていこうと想う。」
「それは良いが……主、資源は大丈夫か……?」
 心配する山姥切国広をみてふっと笑いながら主は応えた。
「刀剣男士の数が増えれば遠征が出せるからな。 それに、一定数は政府から補助が入るから数日間に分けて計10回。 そろそろ内番もいれたいし、料理も俺が作るっていうのじゃこの先俺が外出とかした時にお前らが困るだろう。 だから刀数を増やして、お前たちに生きる術を教えないとな。」
「わ、分かった……。」
「薬研の兄弟は少し待っててくれ、ごめんな。」
「いやいや、大丈夫だぜ大将。 兄弟がいないのはまあ寂しいが、この状況も悪くない。」
 そういって笑う薬研は主に向かって親指を立てた。
「あるじさまだけに、りょうりをおしつけるのもいけませんしね!」
「そうだね、そろそろ僕たちもいろいろとできるようになっていかないと。」
 今剣はいつの間にか安定の膝の上が定位置になったらしく、安定の膝の上で楽しそうに料理楽しそうだとつぶやいている。 そんな今剣をニッコリと笑いながら安定も肯定する。
「さて、じゃあ役割分担するぞ。 俺と国広は鍛刀。今剣と安定と薬研はここに俺が持ってきた料理の基礎の本、家事の基礎の本があるからそれを読んでいてくれ。 大切なことだからな。」
 そういうと、今剣と安定と薬研はしっかりと頷いて了解といい声でいう。 それを見届けると、国広に目を向けた。
「さて、国広。行くか。」
「ああ。」
 部屋を出る間際、本を手に取り出した3振は山姥切国広に声をかけた。
「くにひろー、がんばってください!」
「頑張ってくれよ、国広。」
「国広―! がんばれー!」
 すっかり主の呼び方が写った3振りにふっと笑い、頷いて山姥切国広は主を追いかけていった。
「嫌がらなかったね。」
 主と山姥切国広がいなくなった部屋でポツリと安定がいえば、それに2振が笑って本から目を話した。
「ってことは、これからもこのよびかたでいいってことですよね!」
「だな。じゃあこの呼び方のままで行くか。」
 そんな会話をしながら3振は再び本へと目を向ける。



 鍛刀部屋にやってきた主と山姥切国広は、鍛刀部屋で資源の配合について話し合っていた。
「先輩審神者間で話題の配合でいってみるか。」
「そんなものがあるのか。」
「ああ。いやあ、先輩たちの知恵はすばらしいもんだ。」
 そういいながら主は鍛刀部屋にいる式神に配合を伝えていく。 祈る気持ちで鍛刀時間をみればそこに見えた時間は3時間だ。
「おお、国広3時間がきた」
「誰だろうな。」
 わくわくしながら鍛刀部屋でて、今剣と安定・薬研が居る部屋へと戻ってくればそこにはひどく真面目に本を読みすぎて戻ってきたことにすら気づかない3振りの姿があった。
「熱心だな……」
 山姥切国広は隣りにいる主に小声で話しかける。
「いろいろと初体験だもんな、楽しいんだろ。」
「そういうものか……。じゃあ鍛刀完了までに俺も読んでおこう。」
 そう言って山姥切国広も刀達の和にはいっていく。それをみた主はふっと笑って、ポケットからスマートフォンを取り出した。
「……お前をこの本丸に連れてくるのはもう少し先かなぁ。 待っててくれよ、殿。」
 そうつぶやいた先の画面は、妹とのLINEの画面だった。 こういう生活になってからというもの妹は毎日殿の様子を写真付きで送ってくれるのだ。
「あるじさま、どうしたのですか?」
「ん? ああ、家族からの連絡が着ててな。」
「おお、あるじさまのごかぞく!」
「あとは友達からの連絡も結構きてるな。 もう少し生活が安定したら招くのもありか。」
「あるじさまのしりあいとごかぞくにあってみたいです!」
「そうか? じゃあ楽しみにしてろよ。」
「はい! じゃああるじさまもいっしょにほんをよみましょう!」
「ああ。」
 そういって今剣に手を引かれて主は刀達の和に入っていった。
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