可能性反転世界【TWILIGHT】
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 夕暮れの日差しが差し込む教室、そこに佇む一人の少年は窓の外の世界を見下ろしながら後ろにいるとある存在へと話しかけていた。
「ありがとう、俺の望みを聞いてくれて。」
「いや、別にいいのだ。 ――長いループの中で、お前に興味がわいた。 お前にかけてみようと思う。」
 淡々と響いたその声に、俺はふり向いて苦笑いを零す。
「そうか、まあ、色々と頑張るけど……でも、此処から暫くはアイツが頑張らないとな。」
「……本当に良かったのか? お前だけこの世界に取り残されるという事がどういう事か分からないお主ではあるまい。」
 そう問いかけるのは、アザミ。 彼女はこの世界を作った張本人だ。 彼女が問いかけたのは、この世界に彼一人が取り残されるその意味。
「違うルートは殆ど、俺はアイツを救えずにアイツが飛び降りてアイツがこの世界に留まった。でも、今回は違う。 今回だけはアイツはあの痛みを知らなくてすんだんだ。 それだけでも、俺は嬉しい。」
「そうか。 なら、もう何も言うまい。」
 そう言うとアザミは消えていく。 其れを見送ると俺は、再び窓の外へと目を向けた。

 一度体験したからこそ分かる。 高いところから落ちるという経験は、とても怖くて、痛くて。
 そんな痛みを受けたアイツの気持ちをあの時初めて知って、同時に無力さに胸が一杯になった。
 出来れば助けてあげたいと何度も願って、でも、もう全てが遅すぎた。 いつだって俺は無力で、いつだって俺は全てを取りこぼしてい生きていたんだ。

 でも、この時間軸は違う。
 能力の目覚めがどの時間軸よりも早いからこそ、色々なことが出来る。
 アイツをあの痛みから助けてあげることが出来るのだ。 この自分の手で、アヤノを助けられるのだ。
「……助けられた。 ちゃんと、お前は生きてるんだな。」
 その代わり、彼女に他の時間軸で俺が感じたような気持ちを背負わせてしまうかもしれないけれど、きっとアヤノならば大丈夫だ。 だから。
「頑張れよ、アヤノ。 俺は、此処で待ってるから。」

 お前が色々なことを乗り越えて此処に来る日を、待っているから。

 このいつも夕暮れ時の教室で、お前を待っているから。
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