可能性反転世界【PROLOGUE】
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 手を伸ばしたのは、空。
 最後に目に入ったのは、君が必死に手を伸ばす姿。
 もう、何もかもが無駄だと、目の前に居る父親の姿をした冴えるを止めることは不可能だと悟った私がとった行動は高校の屋上から飛び降りるという行為だった。
 こうすることに何の意味があったのか、それは分からない。 ただ、全ての蛇をこちら側で揃えるわけにはいかないのだ。 だからこそ、私はこうして空を舞っている。

 でも、結局は君を巻き込んでしまったんだね。 私の軽率な行動で君は巻き込まれてしまった。 私があの時とった行動が間違いだったんだと悟ったのは、全てが終わった後で、私の代わりに君がと分かった時にはもう全てが手遅れで。

「姉ちゃん!」
 高校の屋上から全速力で降りてきた私の弟が涙を目にためながら私の無事を喜んでいた。
「ねぇ、修哉……シンタロー、どこ?」
 震える声で呟く。 現実などもうとっくに分かっているだろうに、受け入れられずに、こうして誰かに問いかけていた。
「え? どういうこと……? アイツなら今日先に帰ったんじゃないの?」
「違う、居たの……私を、助けてくれた……」
 あの時、落ちて行った私に手を伸ばして抱き寄せた彼は空中で体をクルッと回転させて、地面との衝突から私を守ってくれたのだ。
「私の、せい……」
「姉ちゃん……?」
「あ、ああ……私が、シンタローを、殺し、私、が……」
 紛れも無くシンタローを巻き込んで死なせてしまったのは私であり、それはイコール、私が彼を殺した事を同義。
 その事実に、体を震わせて頭を抱えた。 違う、私はこんなことがしたかったわけではない。 ただ、弟妹達を助けるヒーローになりたかっただけ、それだけなのに。
 私が、彼を。
 ただ巻き込みたくなかった、能力やそんなものとは無縁の世界で生きていて欲しかった私の大切な人が、私のせいで、私の、せいて。
「いやああああああああああああ」
 その悲鳴とともに、私の意識は途切れた。
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