君を愛してる。と言えたなら | ナノ



先輩、そう呼んで先輩に後ろからぎゅっと抱きしめると先輩は面白いくらいに赤くなって、焦ったように梓くんと僕の名前を呼んだ。先輩を抱きしめると何だかしあわせな気持ちになるから、僕は先輩を抱きしめる瞬間が大好きだ。そのまま首筋に顔をうずめるとスイーツみたいな甘い匂いがして、このまま食べてしまおうかとそっと先輩の首筋を甘噛みすると先輩は可愛らしい驚いたような声を出す。すっごい可愛い。もう一回と口を開いた時、先輩のではない力によって僕の体は先輩から引き離される。誰だよ。


「木ノ瀬!!こいつが困っているだろう!!!」
「あ、宮地くん」
「別に宮地先輩には関係ないじゃないですか。」
「む、そんなことは・・・・」
「それとも僕が先輩に抱き着くと何が都合の悪いことでもあるんですか?」
「木ノ瀬!!!」
「あはは、冗談ですよ」


宮地先輩は先輩のことが好きだ。僕はもちろん、きっと先輩の幼なじみ達も、あの翼でさえも先輩が好き。みんな、みーんな先輩が大好き。


「宮地くん、梓くんも悪気があったわけじゃないから・・・」
「む、そうか」
「うん、だから宮地くんは行って?次、移動教室でしょ?」
「・・・・わかった」


渋々といった感じで宮地先輩は移動教室へ行った。ほら、梓くんもなんて言われれば僕も行かざるをえない。残念。


「先輩、今日はお昼一緒に食べましょう!!」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます」

先輩はふわふわ笑う。やっぱり僕は先輩が大好きだ。でも先輩は鈍いから皆からの好意に気が付かない。しかも優しいから、先輩の行動は僕の心を傷付けたりもする。でもすき。すきじゃ表しきれない、あいしてる。僕は先輩にどっぷり浸かってしまっている。皆に平等に接する先輩の優しさが、僕というちっぽけな存在の首をぎりぎりと締め上げていく。いっそのこと貴女が好きですとでも言えればいいんだけど、僕にはそんな勇気なんてない。ああ、どうせなら先輩に好きだと、愛してると言ってしまおうか。何度考えたって、踏み出せない僕は結局誰よりも臆病なだけだ。




1115 木ノ瀬
企画恋して、愛して。に提出

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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