北へ南へ君の手と | ナノ




付き合い始めてからようやく慣れてきた帰り道を二人で歩く。夕日が綺麗なグラデーションを描きながら夜の帳を呼んでくる。後ろに伸びた影の長さの違いにどういう訳か少し胸が暖かくなって彼女をちらりと見ると彼女も同じタイミングでこちらを見て、ばちりと目が合う、刹那、ふいっと逸らされる。彼女が恥ずかしがり屋なことは知っているから気にはしない。僕への愛情表現ととってもいいくらいじゃないかな?そう考えて、ふと気付く。彼女はいつもは左手で鞄を持つのに、今日は何故か右手で持っている。定位置が左な僕はいつも左手で鞄持っている。僕はこの意味に気付かないような人間じゃない。僕の指先が彼女の手に触れる度にびくりとする彼女が愛しくて仕方がないと思った。僕がやんわりと彼女の手を掬い上げると、彼女はやっぱり少し身体を揺らした。そのままきゅうと指を絡ませて握ってみると、彼女は顔を赤くしながらも握り返してくれる。一つ一つの反応があまりにも可愛くて、僕はやっぱり彼女をとても愛しく思った。この手があればどこへだって行ける気がするだなんて思ったことは、僕自身と繋がった影だけが知っている。




1109 基山
 企画くすぐったいに提出


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