美しいこの世界 | ナノ



ゆるく揺さ振られる心地と優しく私の名前を呼ぶ声がして、私は霞みがかったような意識をゆっくりと起き上がらせた。もう一度呼ばれた名前を聞いて私が瞼を開くと、私の網膜にはふんわり笑う総司くんが写る。随分気持ち良さそうに寝てたねという言葉で私は自分が中庭で寝てしまっていたことに気付いた。なんだか素敵な夢を見ていた気がする。とても幸せな夢。まだはっきりとしない頭で私の顔を覗き込む総司くんにふにゃりと笑いかけると、総司くんの綺麗な翡翠色の目が優しく細められる。ああ、幸せだなぁ。

「どうしたの?幸せそうな顔してるよ」
「幸せな夢を見た気がする」
「ふーん、それって僕の夢だったりしないのかな」
「そうかもしれないね。ううん、きっとそう」
「それは嬉しいなぁ」

総司くんはくすっと笑って、私の髪を撫でた。それから私の横に座って、その大きな手で私の手を掬い上げて握る。

「僕もお昼寝しちゃおうかな」
「うん、一緒に寝よう?」

私が総司くんの肩に寄り掛かると、今日は随分と甘えてくるねと言って私を抱きしめる。総司くんの体温がじんわりと伝わって私はやっぱり幸せな気分になる。総司くんのいい匂いは、私を徐々に眠りへと引き込む。遠くで平助くんと左之さんが騒いでる声が聞こえる。世界は平和だなぁ。ずっとこの平和が続けばいいのにね。そこまで考えて私の意識は深い眠りへと沈む。眠りに沈みきる前に聞こえた優しい声はどこまでも美しく儚く聞こえた。




1109 沖田|薄桜鬼

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