惑星とおやすみよ | ナノ


※アツヤ生存



しとしとざあざあ、耳障りな音が鼓膜を震わせる。真っ暗な窓の向こうは白く曇ったガラスで見えない。晴れていたらきっときらきらきれいなおほしさまたちが見えたんだろうなあ。あーあ、やっぱり雨ってきらい。小さくため息を吐いた私の背中に、いきなりぐっと何かが乗ってきた。誰だかなんて分かりきってる。背中に乗ってきたやつの片割れの方は私の隣にすとんと腰を下ろした。二人からふんわり私と同じシャンプーの匂いがして、ちょっぴりだけど頬が緩んだ。


「アツヤ重いよ」
「うるせぇ」
「アツヤってば、君が元気ないって心配してたんだよ」
「兄貴!!それ言わないって約束だろ!!!」
「あ、ゴメン」
「ったく!!で、何でお前はそんなに元気ねぇんだ?」

アツヤが後ろからじっと私の顔を覗き込んできた。アツヤの桃色の髪が首筋に当たってくすぐったい。アツヤの、髪とおんなじ色をした目が心配そうで私は案外アツヤに愛されてるのかもだなんてちょっと自惚れてしまいそう。

「雨降ってるから星見れないなあって思って」
「そんだけかよ」
「悪いの?」
「そんなこと言ってねぇし」
「アツヤはほんと君にべったりだねぇ」
「余計なことばっか言うなよ兄貴!!!」
「え、なに?何の話?」
「お前は黙ってろ!!」

アツヤは私のおでこにでこぴん一つ落とした。地味に痛い。士郎は相変わらずふにゃふにゃ笑いながら、アツヤに攻撃された私の、少し赤くなったおでこをやんわり撫でてから痛いの痛いのとんでけーと言った。もう、子供じゃないんだけどなあ


「痛くなくなった?」
「うん、ありがとう士郎」
「星は見えなくても、一緒に遊べるよ?」
「そうだね」
「でも今日はもう遅いから、また明日遊ぼう?」
「うん」


三人で部屋の中央に敷いた布団に転がる。私は今も昔も真ん中。

「おほしさま見たかったなぁ」
「まだ言ってんのかよ」
「だって、どうせなら三人で見たかったし」
「明日見ようよ」
「まぁ今日見れなかったから明日も見れないわけじゃねぇしな」
「そうかなぁ?」
「あ、じゃあこれはどう?」

みんなで星を見る夢を見ればいいんだよ。そうすれば三人で星を見たことになるよ。士郎は嬉しそうに言った。なるほど、みんなで星を見る夢を見ればいいんだ。でもどうせ夢を見るなら、三人で宇宙へ行く夢が見たい。士郎もアツヤもそして私も、星を見るのは大好きだ。アツヤは火星に行ってみたいらしいし、士郎は木星に行ってみたいらしい。私は土星に行ってみたいな。ずっとずっと三人で宇宙にぷかぷか浮いて、たくさんの惑星に行きたい。そんな夢をみたい。それを二人に言うと士郎は素敵だねって、アツヤはばかじゃねぇのって言った。ばかじゃねぇのは流石にひどいと思う。でもアツヤがどこかうれしそうだったから許してあげるんだ。目を閉じると宇宙にたくさんの星が浮かんでるのが見える。その間を私達は手を繋いで次はどこへ行こうかだなんて楽しそうに話している。何て素敵なんだろう。いつの間にか眠くなってしまった私が意識を手放す直前に聞こえた二人のおやすみの声は、地球よりも美しくて優しい色をしていた。




0917 吹雪兄弟
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